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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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455回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 255:そして歌姫は

 あの夜の歌だ。

 僕がほのかと歌姫を目指すきっかけになったあの歌を彼女は歌っていた。


 ほのかの歌が始まると、不思議と客席に柔らかい風が流れた気がした。

 彼女の優しい表情、心をほぐす様な暖かな踊り。

 その心地よさに、僕は安らいだ気持ちになる。


 疲れているはずなのに、ほのかの歌が体に染み込んで癒してくれているかのような感覚。


 優しい歌詞と、心に響く歌声、あの日のようにほのかの周りがパステルカラーに彩られていく。

 舞台の上の彼女から目が離せなくなっていく。


 みんな同じものが見えているようで、会場にかすかなどよめきが走る。


 思えばあの日も、一日の疲れでへとへとだったのにほのかの歌に魅了された。

 彼女の歌は疲れた体と心に元気をくれる、聞いている人を楽しくさせる歌なのだ。


 気持ちが乗ってきたところでメロディーがアップテンポになり、ほのかは手拍子をし始める。

 会場から少しずつ彼女に合わせた手拍子が始まった。


 会場を巻き込んだパフォーマンスは次第に客席にいる人達もキャストへと変える。

 不思議な一体感が僕らの心を高揚させていく。


 ほのかは歌の途中で「はい!」と言ってマイクを客席に向ける。

 コールアンドレスポンスだ、事前に観客達に渡されていたタイミングで僕らや客席の一部から合いの手や歌詞の一部をほのかに叫び返す。


 手拍子は次第に大きくなり、ほのかが舞台を右から左に走りながら客席にマイクを向けると、客席全体が歌い、ほのかを中心とした熱狂の渦と共に会場のボルテージがぶちあがっていく。


「これだぁーっ」


 陽介はそう呟きワナワナと震えながら、興奮した様子で舞台を見ている。

 雰囲気でわかる、客席にいるみんなが同様にほのかを見つめている。


 そう、これこそほのかの目指す姿。

 彼女は今アイドルとして羽ばたこうとしていた。


「みんなー!ありがとう、最高に楽しかったよーっ!!」


 歌が終わりほのかが踊りの最後のポーズを決めると、客席からワッと感動の声と万雷の拍手が放たれた。


 大はしゃぎする陽介、伊織はこみ上げる涙をハンカチで拭き、アリスは無邪気な笑顔で拍手している。


 拍手をしながら舞台の上のほのかを見ると、彼女は僕に向かい笑顔を浮かべて、ぶいっとVサインをしてみせた。


 僕はうなづき彼女にVサインをする、陽介達も僕を真似した。

 それを見たほのかは心から嬉しそうに笑い、客席に向けて深くお辞儀をした。


 鳴り止まない拍手と歓声の中、ほのかはついに念願のアイドルになったのだった。

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