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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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454回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 254:歌姫オーディション(12)

「えっ!?」


 名前が呼ばれ舞台に上がってきたミキノを見て僕は驚いた。

 参加してたんだ、アイドルに憧れがあるとは意外だった。


「ミキノ!?なんで?」


 忍者に襲われた一般人みたいなリアクションをしている伊織が面白い。

 チラッとミキノと目が合い、彼女はなんだか寒々しい視線で僕を見た。

 なにか気に触ることしたっけ?


 彼女は舞台の中心でゆったりと両手を上に掲げる、その姿はどこか開花を待つ蕾を想わせる。


 ギターの前奏が終わり、主旋律が始まると、ミキノは力強くダダンッとタップを踏み、音楽に合わせたフラメンコのようなタップダンスを始めた。


 激しい演奏に合わせてミキノの腕が開き、真っ赤な薔薇が舞台に咲いたかと思うと、彼女はスカートをひらめかせ、情熱的な踊りと歌を始めた。


 全身のシルエットを躍動させて踊る姿はさながら炎にも似て、妖艶なそのダンスは会場の視線を釘付けにした。


 歌詞は凶暴な獣の如く、挑発的に感情を掻き乱し、そこにつけこむ艶かしい美声は、一度耳にしたら最後まで聞かずにはいられない。


「あの子こんなに歌うまかったんだ」


 伊織が息を呑む、確かに凄い、だけどこれは。


 ミキノの歌が終わった後危惧していた通りのことが起きた。

 客席にいる全ての人がミキノのパフォーマンスに魅了され、気力を吸い尽くされヘトヘトになっていた。

 歌姫はミキノで決まりだという無言の空気が会場を支配している。


 こんな状況で歌ってもみんなまともに聞いてくれないかもしれない。


「ほのか……」


 僕が弱気になってどうする。

 逆境ならその分応援するんだ!無言でしなきゃいけないけど!!

 

「それでは次の挑戦者、ほのかさん舞台へどうぞ」


 司会がそう言うと、ほのかが舞台に上がる。

 しんと静まり返った客席に向かい、彼女は堂々とお辞儀して笑顔を浮かべる。

 演奏が始まり、ほのかは歌い始めた。

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