450回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 250:君のために出来ること
「おー雄馬!待ってたぜぇ」
部屋に入るとベイルは嬉しそうな顔で僕を迎えてくれた。
「果物買ってきたよ、食べる?」
「ああ、頼む」
「りょーかい」
そう言って僕は椅子に座り、リンゴの皮を剥き始めた。
ベイルは僕の仕草をじっと眺めている。
「意外だなぁ」
「ん?なにがだ?」
「丸齧りするからそのままくれっていうかと思った」
「それでもいいんだけど、雄馬が剥いてくれるなら、その方が美味しいに決まってるからなぁ」
僕の手には砂糖なんてついてないけど?なんて野暮なことは言わないでおく。
言葉通りに彼の気持ちを受け取り、剥き終えたリンゴを四つに割って皿に乗せた。
「いただきます」
そう言って両手を合わせ、ベイルはリンゴを食べる。
僕は彼の空いている左手を握った。
冷たく、痩せた手が悲しくて、僕は両手で彼の手を包んで温める。
「雄馬の手、あったかくて気持ちいいな」
「こうしててもいい?」
「恋人じゃないんだから、まぁ、いいけどよぉ」
照れたように笑うベイル、彼の顔は日に日にやつれていた。
毒は抜くことは出来たが、ハイエナ族のモンスターの特性が働き始めてしまったと医者は言っていた。
ハイエナ族のモンスターは群れから孤立したと認識すると、衰弱して死んでしまう。
そのためメルクリウスにもハイエナの奴隷は殆どいない。
その理由は群れから引き離し奴隷にすると、大抵衰弱して死んでしまうからだそうだ。
リンゴを食べた後、ベイルは愛おしげに僕を眺め、気を失うように眠りに落ちる。
僕は彼の体に布団をかけ、寝息を立てる彼の頬を撫でた。
「絶対に助けるから、負けないで、ベイル」
眠りに落ちても僕の手を強く握ったままの彼の手を額に押し当て、そっとその手を離すと、僕は病室を後にした。




