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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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450回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 250:君のために出来ること

「おー雄馬!待ってたぜぇ」


 部屋に入るとベイルは嬉しそうな顔で僕を迎えてくれた。


「果物買ってきたよ、食べる?」


「ああ、頼む」


「りょーかい」


 そう言って僕は椅子に座り、リンゴの皮を剥き始めた。

 ベイルは僕の仕草をじっと眺めている。


「意外だなぁ」


「ん?なにがだ?」


「丸齧りするからそのままくれっていうかと思った」


「それでもいいんだけど、雄馬が剥いてくれるなら、その方が美味しいに決まってるからなぁ」


 僕の手には砂糖なんてついてないけど?なんて野暮なことは言わないでおく。

 言葉通りに彼の気持ちを受け取り、剥き終えたリンゴを四つに割って皿に乗せた。


「いただきます」


 そう言って両手を合わせ、ベイルはリンゴを食べる。

 僕は彼の空いている左手を握った。

 冷たく、痩せた手が悲しくて、僕は両手で彼の手を包んで温める。


「雄馬の手、あったかくて気持ちいいな」


「こうしててもいい?」


「恋人じゃないんだから、まぁ、いいけどよぉ」


 照れたように笑うベイル、彼の顔は日に日にやつれていた。

 毒は抜くことは出来たが、ハイエナ族のモンスターの特性が働き始めてしまったと医者は言っていた。


 ハイエナ族のモンスターは群れから孤立したと認識すると、衰弱して死んでしまう。

 そのためメルクリウスにもハイエナの奴隷は殆どいない。

 その理由は群れから引き離し奴隷にすると、大抵衰弱して死んでしまうからだそうだ。


 リンゴを食べた後、ベイルは愛おしげに僕を眺め、気を失うように眠りに落ちる。

 僕は彼の体に布団をかけ、寝息を立てる彼の頬を撫でた。


「絶対に助けるから、負けないで、ベイル」


 眠りに落ちても僕の手を強く握ったままの彼の手を額に押し当て、そっとその手を離すと、僕は病室を後にした。

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