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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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448回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 248:歌姫オーディション(10)

「わぁお!」


 秘密基地にやってくると、僕らは感嘆の声を上げた。

 いつもの雑多とした秘密基地が一転、清潔感のある色とりどりの誕生日パーティー会場になっていた。


「飾りつけ伊織がやったの?風船や看板まであって業者に頼んだみたいだ!」


「まぁ私にかかればこれくらいちょろいもんよ!親友のためだしね」


 伊織がそう言うと、アリスと伊織はニコッと見つめ合いハイタッチ。

 本当に仲がいいなぁという気持ちに暖かくなりながら、アリスの誕生日パーティが始まった。


 みんなでお金を出し合い陽介が選んできたケーキを、彼がインベントリから出すと、驚きと戸惑いの声が上がった。


「えっとこれって……」

 ほのかは目を丸くしている。


「ちょっと陽介、これウェディングケーキじゃない!」


「デカくて派手で豪華!って頼んでお金渡したらこれがきたんだよ」


 少し奮発してお金を渡しすぎたかもしれない、陽介って金銭感覚が少しズレてるとこがあるんだよな……。


「私これでいいよ」


 アリスは嬉しそうな顔でそう言った。


「まぁアリスがそう言うなら……」


「今日の主役のお墨付きなら問題ないな!」


「だからあんたが言うなってば」


 みんなホッとした様な顔をして、笑い声をあげ、ケーキに火をつける。


「ハッピバースデートゥーユー」


「ハッピバースデートゥーユー」


「「「ハッピバースデーディアアリスー」」」


 みんなでアリスのために歌い、アリスはケーキの火を消す。

 こうして普通の日常を友達と過ごしてると、自分が死と隣り合わせな生活をしてることを忘れそうになる。


「ひーふーみー、アリス9才だったんだ」


 僕がそういうとアリスは「うん」と照れくさそうに笑った。


 ケーキを切り分け、雑談しながら一切れ目を食べ終わると、僕らはアリスにプレゼントを渡していった。


 陽介は絵本、可愛い動物が武闘会を勝ち進んでいく内容。絵柄は100点内容は明後日の方向なのが陽介らしいプレゼントだ。


 伊織は白兎ファミリーセットを模して作った家と人形一式、売ってたのか、作った?まさかね……。

 僕はあれこれ悩んだ結果、雑貨屋さんに相談して選んだ紅茶を渡した。


「紅茶?」


 アリスと伊織は包みの中を見て首をかしげる。

 

「草の塊じゃん?」


 陽介も彼女達の後ろからのぞき込んで首をかしげた。


「わぁ、もしかしてこれブルーミングティーですか?」


 ほのかの反応にほっとしつつ僕は頷く。


「ブルーミング?」


「ええ!見て頂いた方がいいと思います。いいですか雄馬くん?」


「もちろん」


 ほのかはティーカップにお湯を注ぎ、包みから草の塊を一つ取り出すとそれをお湯に沈めた。

 お湯がピンク色の紅茶にかわり、草の塊が開いて赤くて可愛い花がカップの中で咲いた。


「わぁーっ」


 アリスが感嘆の声を上げた。


「やだ、雄馬のプレゼントなのにおしゃれじゃない」


 心底驚いた様子の伊織。


「失礼しちゃうなぁ」


 ちぇっとすねた顔をしてみせると、伊織はごめんごめんと笑う。


「ありがとう雄馬、可愛いねこれ、凄く嬉しい」


 アリスの笑顔がキラキラしている、喜んで貰えたみたいで何よりだ。

 なんだかほのかが僕の横でもじもじしている。


「どうかした?」


「私今日アリスちゃんの誕生日のこと知らなくて」


 ほのかはなりゆき的に付き合ってもらっただけでプレゼントとかは気にしないでと伊織が来る前に言っていたけど、やっぱり少し気になるみたい。

 せっかくだからなにか出来ることは、と考えていると、妙案が浮かんだ。


「そうだ、こんなのどう?」

 僕はほのかに耳打ちして、彼女はパァッと顔を明るくして僕の提案に同意してくれた。


 僕はギターを手に取り、ほのかと一緒にアリスを見た。


「私からはアリスちゃんに歌を贈らせてください」


「おっいいねぇー」


 ギターを演奏しその曲に合わせてほのかが歌い始める。

 アリスが好きな子供番組の歌だ。

 ほのかの優しい歌声がマッチしてて素敵な空気が秘密基地を包んだ。


 歌が終わりみんなからの拍手の後、僕はふと気づく。


「あれ何気にやったけど……」


 ほのかも気づいたみたいで、驚きながら彼女は僕の手を取り顔を見た。


「雄馬くん!」


「歌えたじゃんほのか!」


 人前で歌えなかった彼女がついに歌えた!


「やったぁ!やりました雄馬くん!!」


 ほのかは心から喜び僕を抱きしめた。

 みんなが見てる前だから恥ずかしくて、僕は目を泳がせながら頭をかく。


 そんな僕らの様子を伊織はなんだか複雑そうな表情で見つめていた。

 目があって、彼女はすぐ笑顔になった、なにか考え事でもしてたんだろうか?


 アリスが何か言いたげにしている。


「どうしたの?アリス」


「私みんなにお願いがあるの」


 そう言って彼女はインベントリからドレスを出して、伊織とほのかに手渡した。

 それは前にいた世界のアイドル『MGM16』の物にそっくりのドレスだった。


「みんなとこれ着て一緒に歌いたいの」


 アリスがもじもじと顔を赤くして言う、その姿がなんだか可愛らしいなと思っていたら、彼女は僕にもドレスを差し出してきた。


「えっ僕も?」


 アリスはうなづき、伊織と陽介はニンマリ、ほのかはあわあわした。

 仕方ないから僕もアイドルのドレスに着替えることにした。


挿絵(By みてみん)


「わぁ雄馬くんかわいい!」


「なによ普通に可愛いじゃないの」


「私の見込んだ通り、似合ってる」


 陽介以外全員がアイドルドレスを着て、踊り台の上に立つ。

 アリスがセンターだ。なんだかドキドキしてきたぞ。


「この状況だと俺の誕生日みたいだけどいいのか?」


 陽介が若干困惑しながら尋ねる。


「細かいこと気にしないの!」


「へーい」


 そういえばMGM16は前に陽介が好きだって言ってたけど、まさかアリスは陽介のためにやろうと思ったんだろうか?


「何歌う?」


「やっぱあれでしょ」


 あっこのやり取りはTVやライブでMGM16が歌うときのお約束。

 次の言葉と動きに備えタイミングを合わせて、みんなで叫ぶ。


「「「アトラス!」」」


 そこから僕らは陽介の前でMGM16の代表曲アトラスを歌って踊った。


 結局陽介も飛び入り参加して、観客のいないステージにはなったけど。

 陽介が嬉しそうにしてるのを見て、アリスは満足そうに笑っている。


 みんな楽しそうで、この場に一員としていられることが嬉しい。僕は心からそう思った。

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