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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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446回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 247:歌姫オーディション(9)

「ゆーまくん!」


「うわっと!」


 転送の間に戻ると、ほのかが僕に飛びついてきた。そのまま彼女は僕を抱きしめて離さない。


「ほのか、みんなが見てるよ、離して」


「だめですよー、今日の活躍にご褒美もらわなきゃ。今日は雄馬くんは私のものなのでーす!」


「まいったな……」


「ご褒美は雄馬が貰ってる感じじゃね?」


「助けて陽介」


「見てて面白いからこのままにしとくわ、にしし」


「薄情者ぉ」


「陽介はああいう事されると嬉しいの?」


「ん?まぁ女の子に抱きつかれて喜ばない奴なんかいないんじゃね?」


「そう……」


 アリスはそう言って、陽介と自分の背の高さを見比べた。

 難しそうな顔をした後、彼女ははっと気づいた様に自分の手を見て、陽介の手を握った。


「なんだよいきなり」


「お情け、ああいう事して貰えない陽介かわいそうだから」


「なんだよ、悪かったなモテなくてぇ」


 不貞腐れる陽介と、彼に気づかれない様に繋いだ手を見て少し赤らめた顔で微笑むアリス。

 なんだか微笑ましいなぁと思いながらにこにこしながら見ていると、陽介に恨めしそうな顔で見つめられた。


 転送の間から出てくると、伊織が外の回廊で待っていた。


「雄馬、あっ」


「どうしたの?」


 伊織は僕を見ると凍りついた。

 なんか顔についてる?と思ったらほのかが僕を抱きしめる力を強くした。


「ぐっぐるじいっ」


「ずいぶん仲良いんだ」


「ご褒美です、私今日活躍したので!」


「ふーん、なるほどね」


 なんだか伊織の目が物凄く冷たい気がする。


「雄馬私にはご褒美くれないのにね」


 なんだろう胸を抉る様な鋭い言葉だった様な。

 お礼は渡してるつもりだけど、まさか伊織がご褒美を欲しがっていたとは。

 でも伊織にご褒美ってなにをしてあげればいいんだろう。


「はいはいそこまで!気持ちはわかるがツンケンはなしだぜ伊織。こいつの鈍さは今日に始まった事じゃないだろ」


 間に入った陽介に伊織はムッとした顔をした。


「そりゃそうだけど、アンタにまで見透かされてるのは正直ショックだわ私」


「陽介だからね……」


 アリスが陽介の手を握りながら、同情した目を伊織に向け、伊織はなんとも言えない表情を浮かべた。


「アンタがいうなって感じよね……」


 アリスと伊織は何か通じ合うものがあるらしく、お互いの顔を見ながら互いを励ます様に小さくうなづきあった。


 そんなこんなで僕らはホールでの夕食の後、秘密基地へ向かった。

 今日はアリスの誕生日、みんなでお誕生日会をするという話になっていたのだ。


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