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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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433回目 ブラックデビルストライカー

 政府システムは地球外へ

 地球上には延々と続く戦争で荒廃した大地


 地上を離れた者達は形だけの統治を続けていた。

 ルールと命令、与えられるのはそれだけ。

 それで自分たちは地球を管理していると豪語している。


 この世界の秩序は闘争でしか得られない。

 地上の法律は死者の血で書かれていた。


 正規軍と傭兵ギルド、ギルドに雇われたトップ傭兵達と、使い捨ての戦争単位として利用されている一般傭兵達。


 国籍のない人間がゴロゴロいる。

 そんな中で、傭兵になるのは割と簡単だ。

 屑鉄で造られた銃と、粗悪な弾丸。

 アームドロイドと、トラッシュと呼ばれる彼らはそういう関係だ。


 死体を降ろして、機体を少し直してそいつに乗って戦場に出る。

 そうしたいつもの作業の後、死体を踏み越えながら、次のパイロットとして乗り込む少年の姿があった。


 戦場に打ち捨てられた機体の位置を把握しながら、それらをブービートラップとして利用しながら戦い。

 足りない弾薬を補うために動力炉を撃って爆発させ、自身を追わせて、袋小路に誘い込んだと思い込ませ、乗り捨ててあった機体を使い背後をとって、命乞いする敵相手に「命乞いをした相手をあんたは見逃すのか」と皆殺しにする。


 少年はある傭兵に活躍を見られていた。

 あいつは使えるとピーキーすぎて乗り手のない機体を与えられ、ベテランパイロットのいるチームに配属、そこで任務を行うことになった。


 評価を高めながらも、人としての感情や価値観が欠落したただの殺人鬼として成長してる彼に、人間性を与えてやろうとするチームメンバーの一人。

 仲間達はそんな無駄なことはやめろと彼を諭すが、メンバーはやめない。


 少年はそれを煩わしく思いながら、ある戦闘で彼が死に、それに対して自身が涙を流していることに気付き、自分にも彼らと同じ感情があると知った。


 仲間と打ち解けていく少年だったが、そんな彼の前に浮浪児仲間だった少年たちが現れた。

 彼らはテロリストの捨て駒として育てられ、憎悪の増幅装置として生きるしか無くなっていた。


 彼らは自分たちは預言者に従って戦っているといった。浮浪児仲間達は選ばれし戦士、それには当然お前も含まれている。そう言って少年にテロリストに寝返る様に促す。


 断る少年に対し、預言者からの言伝だと言って三つの予言を残しテロリストたちは去っていく。


 浮浪児達の変わり果てた姿と、彼らが自らを仲間として自身必要とする状況、現在の傭兵団の仲間との絆の間で揺れ動く少年。

 少年は団長にだけ予言のことを打ち明ける。

 いくつかのミッションの中で、確かに予言は現実になっていった。


 傭兵団のみんなを守るために、テロリストに接触しようとしていた少年の前に、団長は一人の男を連れてくる。

 彼は本来ならトラッシュが一度も見ることすらもできない、成層圏からの支配者、ブルーブラッドの一人だった。


 男は少年にこの地上の惨状はブルーブラッド達により綿密に計算された上で構築されていると明かす。

 人々を管理支配するためのシステム、シビリアンコントロールを行うためのバランスの最効率の形式が現状であると。

 テロリストの最近の活動でそのシステムが揺らぎ始めていて、そんな彼らが勧誘する君こそが彼らにとって最も恐るべき脅威であるという。

 男から使い方は君に任せると言われ、ストームブリンガーという一体の超高性能アームドロイドを託される少年。

 男はそれを神殺しの剣と言った。


 預言者の言う通りに戦闘を行えばシビリアンコントロールのバランスを崩し、地上の支配権を、ブルーブラッド達から取り戻せるという孤児達の操る高性能機の群れ。

 少年は彼らと訣別し、偽りの神「預言者」を倒すために戦場へと赴く。


 預言者の正体はかつてブルーブラッドと戦争していた勢力が残した最終兵器とそのAIだった。

 かつての仲間を倒し、最終兵器を撃破する少年。


 男が少年の活躍に賞賛を贈ると、少年は彼の顔を殴りさっていく。

 男は見抜かれていたかとひとりごちて自嘲するように笑う。


 預言者によるシビリアンコントロールの破壊もブルーブラッドの計画のうちだったのだ。

 統治機構が破壊され地上が混乱することで、ブルーブラッドは支配権を取り戻すための武力弾圧が可能になる。

 全ては新しい地獄を作るためのリセット計画だった。


 ただそれを行えば地上の人類が死滅する可能性が15%ほどあったため、男の所属する一部派閥が預言者打倒の計画を水面下で進めていた。


 少年は自らが望んだ地獄の続きを生きる。

 ただ彼の傍にはいつも傭兵団の頼もしい仲間の姿が常にあったという。

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