430回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 233:焔花(1)
「さてと、今日も張り切って頑張りますか」
僕と陽介は実習でどこかの都市の入り口にやってきた。
「都市……って聞いてたけど、壁しかなくね?」
僕らの眼前にあったのは、たしかに都市というより壁だった。
おそらく都市を守るための防壁なのだろうけど、都市全部この壁で囲んでるんだろうか?
「とにかくターゲット見つけないといけないし、入り口探してみようか」
「都市の外縁歩いて探すのかよぉ」
ぶつぶつと文句をいう陽介をなだめながら歩いていくと、だんだん他の 祓魔師 の姿をたくさん見かけるようになってきた。
「こっちの方角で正解だったみたいだね」
「何時間も歩く羽目にならなくてよかったぜ」
都市の入り口と思われる巨大な門、門までの道を阻むかのように流れる川、川にかかった大きな橋がそこにあった。
「でっかい石像だな、通行の邪魔になるのになんであんな所に作ったんだ?」
陽介の言う石像は、門の前を塞ぐような形で仁王立ちしていた。
たしかにあんな物があったら、馬車も通れないし、せっかくの道が使えない。
陽介が僕の腕をチラチラと羨ましそうな顔で見ている。
理由は伊織にもらった新しい装備、ガントレットだ。
装備品が増えてきたのと安全性確保の為、爆裂手甲と黒ナイフを一つにまとめ、防御性能も上げた物がこれだ。
爆裂手甲はいわばプロトタイプで、こちらも並行して作っていたらしい。しかも新機能付き。
にしても仕事が早い、伊織ちゃんと寝てるんだろうか?
「いいな、かっこいいなそれ。俺にも作って欲しい……」
「陽介も新しい槍作ってもらったじゃない、リキャストが早くなるやつ」
「まぁそうなんだけど」
そう言って陽介はインベントリから槍を取り出すと軽く振り回して構えた。
プレイヤー向けにブラックスミスのスキルで生み出した装備に関しては、威力や防御力の他に固有スキルの付与などが可能だ。
陽介はキャスト時間0にできる槍を伊織に頼んだが、極端な性能にするとバックファイアの様な物が働くと却下されて今に至る。
安全性を確保する為のスキルでバランスを取らないと、使った瞬間腕が吹っ飛ぶとかになりかねないらしい。
そのあたりの事情を理解してもらえず、ブラックスミスに対してキツく当たる戦闘職も少なくないとか。
ゲームでこの世界にいた時は、それぞれの役割分担で仲良くやれてたのになと少し寂しい気持ちになった。
「腰のそれはなんなんだ?」
「気になっちゃう?」
思わず僕はにっこりした。
こっちは僕が伊織にお願いした装備、仕様を提案した時「爆死したいの?」と呆れられたジェットパックだ。
「中に爆薬が仕込んであって、それを爆発させて跳べるんだ。凄いでしょ」
「一つ間違えたら体が上下に分離しないかそれ」
陽介も怪訝そうな顔をして引いている。
そんなに変かな?なんにせよ使うのが楽しみだ。
ガントレットと一緒に渡されたあたり、これのせいで伊織に無理させてしまった気もする。
お礼の素材調達頑張らなきゃね。




