422回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 225:街へ行こう(2)
「わぁ!街だ!!」
僕は馬車から飛び降り深呼吸して街の空気を全身で感じた。
「そんな懐かしむほど長期間いなかったわけじゃないけどな」
ベイルは燕尾服に似た上品な服装で、首元を窮屈そうにしながらそう言った。
伊織達とはあまり話したことがないからか、僕のそばにぴったりくっついている。
伊織達の獣従者はついてこなかった。
彼らが言うには、プレイヤーと獣従者は基本的にドライな関係らしい。
「あんた達の関係が特殊すぎるだけなのよ」
伊織はそう言って、陽介は俺もそういう関係になりたいけど、なんか話しかけても目も合わせずに必要最低限のことを答えてくれるだけなんだよな。と残念がっていた。
僕はベイルの顔を見る。
「なんだ?」
彼は僕を見て首を傾げる。
こう言う関係でいてくれるベイルの気持ちがありがたくて、僕は笑った。
「な、なんだよ。この格好そんなおかしいか?」
「ううん、よく似合ってる。ベイルが一緒に来てくれたのが嬉しくて」
「そりゃお前がせっかく俺を遊びに誘ってくれたんだからよ、行くに決まってるし」
僕はたまらなくなってベイルを抱きしめた。
「ありがとうベイル!」
「おまっ気持ちはわかったから離れろって、みんな見てて恥ずかしいからぁ」
「来たくないなんて言ってたのに、超楽しんでるじゃない」
伊織は僕に肘鉄砲を入れ、呆れたような顔をした。
「みんなと来られてよかったよ」
「みんなねぇ……」
伊織が僕をじっと見つめる、なんだろう?
彼女は僕の様子にため息をつくと、まぁいっかと苦笑した。
「なぁなぁ!俺行きたいとこがあるんだ!!」
「あそこだよね?私も行きたい」
興奮気味の陽介と、目をキラキラさせているアリス。
ブルーノの様子を見に行きたい所だけど、どうしようかと少し悩んでいると。
「とりあえず気分転換からでも良いんじゃない?」
僕の気持ちを察してか、伊織はそう言って僕の背中を押した。
「ちょっ、伊織」
「タイムイズマネー!行くわよ、さあさあ」
グイグイと彼女に押されるまま、僕は陽介の後について歩いた。




