421回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 224:街へ行こう(1)
そして週末、街へいける休日がやってきた。
いつもなら朝食で賑わうラウンジも、購買コンビニも閑散としている。
僕は購買でアンパンと牛乳を買うと、見晴らしのいい場所で中庭を眺めながらそれを食べていた。
伊織や陽介アリスもきっと今頃街へ繰り出しているだろう。
今朝、早めに目が覚めた僕は、僕は彼らに声をかけられないように逃げるように行方をくらませた。
今こうしているのも、彼らから隠れる目的というのが少しある。
ベイルのおかげで気持ちは大分晴れたのだけど、それでも街に出て浮かれて遊べるような気分にはなれない。
こんな僕が一緒にいては、みんな気を使って思うようにはしゃげないだろうし、もう一つ街に行きたくない理由があった。
「こんなとこにいた」
突然声をかけられ驚いてそちらを見ると、伊織が朗らかな笑顔を浮かべて僕を見ていた。
「せっかくの休みをぼーっとして過ごすつもり?」
そういって彼女は僕の隣に座る。
「おっちゃんもきっとあんたに会いたがってるわよ」
その言葉を聞いて僕は俯く。
街に行きたくない理由の一つがブルーノだったからだ。
「ブルーノには凄く会いたいよ。だけど怖いんだ、もし僕のいない間にみんなになにかあったらどうしようって」
約束が守られているか、なにか不測の事態でみんなが酷い目にあってないか、それを見るのが怖くてたまらない。
伊織は胸に手をあて、遠くを眺めた。
「避けてたって現実は起きたことの先にしか進まない、だから目を背けたくても知る必要があるのよ。
知る事で選択肢が増えるなら、あんたはおっちゃん達の行く末を見届けるべきだと思うな」
そういうと彼女は足を宙に投げ出し伸びをした。
「それに付き添いであんたのとこのルームメイトも連れ出せるし、おやすみあげるには丁度いいんじゃない?」
「ベイルが一緒でもいいの?」
「あんたはその方が絶対楽しいでしょ」
手のかかる弟を見るような笑顔の伊織に、僕は少し照れながら頷く。
「あーやだやだ、妬けちゃうわねほんと」
「どういう事?」
「こっちの話、さあ行くと決まれば善は急げよ。陽介とアリスも待ってるし、ルームメイトのお目付け役にも話通さなきゃ」
「ちょっ、伊織待って!」
伊織はころりと後転して立ち上がると走り出す、僕は急いで彼女の後を追うのだった。




