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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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418回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 221:咎人の祭歌(5)

 僕の言葉に答える様に、人魚は歌の様な叫び声をあげ、自身を中心としたエネルギー障壁を発生させた。

 

「おいおい」


 高速で拡大していく障壁に驚いていると、氷雨が僕の前に割って入り、障壁を真っ向から受け止めた。


「クッ、流石に重いな」


 氷雨は苦い表情を浮かべる。

 障壁が通り過ぎ霧散、僕は氷雨の影にいたため無事だった。


「雄馬、次のが来る前に!」


「任せてッ!」


 僕は人魚に向かい駆け出した。

 人魚は全身を震わせ咆哮し、鱗の下から空を泳ぐ無数の怪魚を放出し、それらが空中で渦を巻き、僕に向かってきた。


 僕は怪魚の群れの中心目掛け黒ナイフと白ナイフを投げ、爆発させ吹き飛ばした。しかし残った群れが迫る。

 距離が詰まる前に手甲のミサイル鋲を連射して撃ち落とし、山刀で斬り払い押し通る。


 爆風で飛散した怪魚の群れが、一斉に背後に集結し歯を鳴らしながら追いかけてきた。

 眼前からは人魚が腕を振り上げ猛然と迫る。


「フーッ」


 僕は込み上げる恐怖心を深呼吸で押さえ込むと、人魚の動きを見ながらタイミングを図る。


「動きはさっき見た通りだ、三、ニ、一……来た!」


 人魚の巨腕をギリギリまで引きつけて、踏み込む!


 スライディングし体を沈め、山刀を下段に構えて力を溜めながら、紙一重で巨腕の攻撃を掻い潜る。

 人魚の脇の下に入り、僕はそのまま山刀を振り上げ、人魚を斬り裂いた。


 鼓膜が破れそうな甲高い悲鳴が上がる。

 傷口から腐った血の様な黒い体液が勢いよく噴出した。


「通った!」


 腕の切断まではいかなかったが、やっぱり琥珀のダガーの力か僕の攻撃なら届く様だ。


 人魚の逆襲の一撃が左から迫り、迫る巨腕に刃を突き立て、その威力を利用して吹き飛び、前宙をして回避。


 宙を飛ぶ僕に怪魚群の追撃が迫り、氷雨の氷刃がそれを粉砕。僕は氷雨の後ろに着地した。


 人魚が悲鳴に似た雄叫びをあげて、周辺の建物のガラスが一斉に砕け、口に青白い光を溜め始める。


 氷雨はサーベルを高く掲げ、肩越しに僕を見て微笑む。


「君に賭けるよ雄馬」


 僕はうなづくと再び走る。

 目の前に怪魚の群れが展開する。


「そのまま走って!」

 後ろから氷雨の声が聞こえた。


 周囲に光る小さな粒子が広がっていく、氷雨の星霜結界だ。

 その怪魚が凍てつき砕ける中を走り、黒ナイフを投げる。


 人魚が歌う様な声を発し、チャージしていた光を肥大化させ巨大な光線を放った。


 巻き込まれる!?そう思った瞬間。


黄昏ノ天宮ゴールデン・エンプレス !!」


 氷雨の叫びと共に、冷気が周囲の光の屈折率を変え周辺を黄昏色に染め、サーベルから放たれた巨大な冷凍光線が人魚の光線に衝突、僕はその直下を掻い潜り、人魚に迫った。


 瞬きすると、突然目の前に村人達が現れ僕に縋り付いてきた。


 琥珀のダガーが眩しく光り、村人の幻影を打ち払い、幻影に隠れ僕の首を狙っていた数体の怪魚を山刀で受け止める。


「ぐぬう!」


 怪魚を弾き、ミサイル鋲を使い撃ち抜くと、光線を撃ち終えた人魚が再びエネルギー障壁を発するのが見えた。


 僕の進行方向を塞ぐ様に怪魚の群れも押し寄せている。


 僕は迫る魚群の合流点の隙間を見つけ、岩に飛び、三角跳びの要領でさらに跳ねる。


 白ナイフを煙幕に包まれた岩に投げ、爆発の力でエネルギー障壁を飛び越え、怪魚の群れの隙間を抜け、人魚の直上へと出た。


 山刀を両手で下向きに構え、人魚の目掛けて攻撃を仕掛ける。


 人魚の胸の上で、山刀の先端が見えない壁に接触し激しく火花を散らし始めた。


「貫けぇえええ!!」


 僕は叫びながら力を込める。

 刃が人魚に接近し、接触して、胸が爆発したようにはぜて開く。


 人魚の体内の空間に、水晶の髑髏を抱きしめ、眠るエレナの姿があった。

 僕は手を伸ばし、エレナの抱えた水晶の髑髏に触れる。


 指先から眩い光が迸り、全てをホワイトアウトさせていく。

 その光の中でエレナが母と呼んだ人魚と、水晶の髑髏が、蒸発する様に消えていくのが見えた。

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