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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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412回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 215:氷雨(10)

「エレナは死んでない!」


 木こりの男はそう叫び、将冴(しょうご)の胸ぐらを掴んだ。


「モブがいい度胸してるね」


 将冴は涼しい顔をして木こりの腕に杖を当て、木こりの腕を燃え上がらせた。


「まずい」


「ボクがやるよ」


 氷雨がサーベルを突き出し、そこから放たれた冷気が木こりの腕に当たり火が消えた。


「ああ君たち、いたの?」


「将冴、お前何やってんだ」


「なにって生意気なNPCにしつけしてただけだけど」


「NPCって……」

 僕は木こりに駆け寄り、腕の様子を見ながら将冴の言葉に顔をしかめた。


「彼にはこの世界ですることの全てがゲーム感覚なのさ、これ使って」


「ありがとう」

 僕は氷雨から包帯と薬草を受け取り、薬草を少し手で揉んで、木こりの火傷に張り付けて包帯を巻いた。


「女房をなくした俺には、あの子しかいないんだ……」


 木こりは涙を流しながらそう言った。

 その姿に一時はエレナの生存を疑ったことに対する罪悪感を覚えた。


「お子さんは必ず助けます、だから貴方は避難しててください」


 氷雨が僕の肩に手を置き、微笑みながらうなづいた。


「守れない約束なんてするべきじゃないぞ」


「将冴……お前なぁ」


「ロールプレイも大概にして、君らも少しは俺達に協力したらどうだ?」


「無粋だね、彼らが本気がわからないのかい」


「馬鹿馬鹿しい、子供の遊びじゃないんだ。それに君がそんなこと言える立場なのか氷雨」


 氷雨は口をつぐみ、表情を翳らせる。


「以前オブジェクトの暴走を起こした 契約者(ディオス) は君が殺したんだぞ」


 将冴はそんな氷雨の反応を楽しむかのようにニヤリと笑う。

 木こりはそれを聞いて顔を青くした、体がかすかに震えているようだ。


「具合が悪いんですか?」


「い、いや。娘が心配で」


 なんだか様子がおかしい、もしかするとオブジェクトのありかを知っているかもしれない。

 僕は木こりを刺激しないように近くに寄り、小声で彼の耳に話しかける。

 

「娘さんの居場所、他に心当たりはありませんか?」


 木こりは僕を見ると、縋るような表情をした。


「流行病におかされた者を隔離する為の施設が森の中に……」


 僕は木こりにその施設の場所の説明を受けると、陽介と氷雨と共に、森の暗闇の中へと足を踏み入れていった。


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