409回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 212:氷雨(7)
「キャストコール!ストーンブラスト!!」
陽介がそう叫ぶと、彼の背後に6mくらいのゴーレムが現れ、地面から巨岩を取り出し、スケルトンの群れに投げつけた。
巨岩は空中で割れ、無数の岩石がスケルトンを粉砕する。
僕は残ったスケルトン三体の間合いにスライディングで滑り込む。
足払いで一体倒し、立ち上がりながら左フックで一体の首を折る。
「一」
右裏拳で斬撃を弾いて左ストレートで頭蓋骨を砕いた。
「二」
背後に迫っていた棍棒をかわし体を沈め、体当たりで相手の姿勢を崩し、右の回し蹴りで延髄を捉えて引き込むようにうつ伏せに倒して、首を踏み折る。
「三」
陽介の背後にスケルトンが現れ、剣を振りかぶった。
手甲をそちらに向けスイッチを押すと、手甲にの穴から閃光と破裂音が生じ、飛び出した鋲がスケルトンの眉間に当たり、頭部を粉砕した。
陽介は目を丸くしながら口笛を吹いた。
「爆裂手甲ってそういう意味か」
「伊織がこの間氷雨と戦ってるの見て作ってくれたんだ」
僕が頼んだのはロケット式の鋲の部分だったのだけど、伊織がこっちも必要になるはずと手甲型にしてくれたのだ。
「俺たち二人でもなんとかなるもんだな」
「あまり楽観的になれる状況でもないけどね」
黒ナイフを用いた爆発で敵を吹き飛ばし、近づいてくる敵を僕が個別撃破、その間に陽介がキャストタイムを済ませ広域破壊。
このコンボを繰り返せれば凌げるが、問題は無限湧きに対してこちらの物資が有限である事。
黒ナイフは残り三、村人が逃げる時間稼ぎをどのタイミングで切り上げるかが重要だ。
「雄馬、次のが来るぞ」
陽介の言葉通り、地面から新たなスケルトンが這い出てくる。
「ちくしょう、アリスがいれば少しは楽できたのに」
「風邪引いて寝込んでるんじゃ仕方ないよ」
僕らは将冴の指示を無視して、村人を守るために集団から抜けて戦っていた。
この状況と彼の性格からして、恐らく助けに来る仲間はいないと思っていい。
僕は黒ナイフを投げて煙幕を作り、それを爆破させスケルトン達を吹き飛ばした。
「あれ?」
「ちょっと待てよ!」
さっきまでより這い出してくる数が多い、吹き飛ばした後もさらに這い出し続け、僕らはすっかり取り囲まれてしまった。
「手伝いは必要かな?」
その声と共に、あたりに輝く小さな粒子が現れ始めた。
「今の声、どこかで聞いたような」
声のする方にいた人影が近づきながら掲げた剣を振り下ろす。
「 星霜結界 !」
スケルトンの集団が、粒子にまとわりつかれて凍りついていく。
「怪我はないかい?ボクの王子様」
氷雨はそういうと、かっこいいポーズをしながら流し目で微笑んだ。




