402回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 206:氷雨(1)
ベイルと一緒に寝ていると、僕らを見つめ続ける誰かの気配がした。
気のせいかな?と思い無視するが、寝返りをうっても時間が経っても、大きな誰かがそばに立って見下ろしてる感じが消えない。
なに?なんなの?
僕は恐怖心を抑え、ゆっくりと目を開く。
ベッドの隣にラングレンが仁王立ちしていた。
「……おはようございます、ラングレンさん」
「おはようございます、雄馬さん。ベイルさんを迎えに来ました」
「う、うん。でもなんでこんな所に?」
「ノックしましたが、反応がありませんでしたので」
何かあったかと思って入ってきたと……。
壁掛け時計を見るとたしかにラングレンが来る時間だ。
「でも今日って休日じゃ?」
「奴隷の労務は休日もあります」
「んぁ……わりぃな雄馬、寝過ごしちまった」
休みも仕事なんて、なんだかベイルに申し訳ない。
「うりゃっ」
ベイルは僕の鼻をつまんだ。
「ほえっ!?はにするのヘイル……」
「また俺に気ぃ使ってただろ、顔に出やすいなお前」
にへらとベイルが笑い、僕もつられてはにかみながら笑った。
ベイルはさっと着替えを済ませ、出て行く間際に僕の顔の横に口を近づけた。
「できたら今日もお土産頼むな」
そう耳打ちした彼に親指を立てて見せると、彼はニカッと笑いながら、ラングレンの後について部屋を出て行った。
ベイルが出ていき、ポツンと一人で部屋にいると、なんだか妙に寂しさを感じ始めた。
机の上に置いたブルーノの木彫り像を手に取り、ブルーノが削った痕跡をなぞりながら、酒場のみんなのことを思い出す。
「みんな元気してるかな……」
しんみりしそうになった、まだ数日も経ってないのにホームシックなんて!
お腹がぐうと鳴った。
いつもは伊織とラウンジで軽く朝食を摂ってから講堂に向かう。
だけど僕の部屋からラウンジまでは距離がある、講堂に行く用事がないなら近場で済ませたいところだ。
「購買行ってみようかな、場所は伊織に聞いたし」
僕は部屋を後にして、購買に向かうことにした。




