表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
394/873

389回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 193:クロスヴァイン大聖堂(2)

「やめろって!一人で着替えできるから!」


「へーベイルは褌なんだ」


 部屋に着くや僕はベイルの着替えを手伝うことにした。

 ベイルは思春期の子供みたいに抵抗している。


「当たり前だろこれのが尻尾出すの楽なんだ」


 変なことに驚くやつだなという表情で僕を見るベイル。

 褌のお尻にくるあたりに切れ込みが入っていて、そこから尻尾を出す仕組みらしい。


「それはともかく離れろって」


 同性に裸見られて恥ずかしがるなんて、なんだか可愛いなと思いながら、僕はベイルの服を次々剥ぎ取っていく。

 

「なんなんだよその手際の良さ、目つきが怖い、怖いから!」


「そうかなぁ?」


挿絵(By みてみん)


 次は褌だ。

 僕はワクワクする気持ちを抑えきれず、足元への注意を怠った。


「あっ」


「あ"ッ!?」


 僕は床に散乱した彼の服につまづき、ベイルの方に倒れてしまった。

 僕らは盛大に転んだ。


「あいたた……ごめん、大丈夫?」


「……ッ」


「ベイル?」


 起き上がり眼前の彼を見ると、驚きに目を見開いていた。

 今の状況をよく見てみると、僕がベイルをベッドに押し倒した形になっていた。


「わぉ……」


 僕はベイルの細いながらも引き締まった体にドキッとした。


「お、おい、何すんだ」


 戸惑うベイルの声、僕は悪戯半分で彼の脇から順番に、両腕、両手首を掴んで、その体を観察した。


「綺麗な体してるね」


「な……ッ!?」


 顔を赤くしながらベイルが僕を見ていた。

 あまり嫌がってないように見えるのは気のせいだろうか。

 顔を近づけると、彼は少し恥ずかしそうに視線を逸らし、瞬きの後僕をじっと見つめた。


「なんだよ……?」


「キス待ち距離なのに意外と嫌がらないんだなって思って」


「なに言ってんだおめえ、男相手に」


 一呼吸置いて、ベイルは続けた。


「ここに来てドキドキしすぎて麻痺しちまってるのかも、それにキスなんてしねぇよな?」


「人工呼吸はしたけどね」


「じんこー?」


「息が止まった人に呼吸戻す為に、口移しで息を吹き込むんだ」


「へー口移しで……口移し!?」


「救命措置だしキスではないから」

 そう補足はしたものの、ベイルの顔は真っ赤になり、目がぐるぐると混乱していた。


「お、俺の初めてが……しかも人間……」


「なんかごめん……」


「謝んなよ……俺のこと助けようとしたんだろ」


「うん」


 ずっと僕がベイルを押し倒し、キスするくらいの距離感のままだ。

 この状態で僕らは何してるんだ?少し僕は冷静になった。


 ベイルの顔を見ると、彼はしげしげと僕の顔を眺め、まるで続きはまだか?と言いたげな表情をしているように見えた。


 なんか変な雰囲気だ、少し胸がドキドキする。


 その時突然部屋の扉がバーンッと音を立てて開かれ、僕らはビクッとなって扉の方を見た。


「伊織!?」


 そこには街にいるはずの伊織の姿があった。

 なんで?どうして?

 伊織が僕らの様子を見て目を丸くし、口を手で押さえながら壁に倒れ込んだ。


「雄馬……あんた」


「あっこれはそのふざけあってただけで」


 伊織は泣きべそを浮かべ「馬鹿!」と叫んで出ていってしまった。


「ちょっ伊織!?待って!」


 彼女を追いかけようとベイルから離れる。

 でも今からじゃ初めて来たこの建物の中、追いつける気がしない。


「ふざけ半分ならこんなことすんなよ……」


「え?」


 ベイルの言葉に驚き背後を見ると、彼はジトっと僕を恨めしそうに見られた後、不機嫌そうに着替えを続けはじめた。


「今のどういう意味?」

 尋ねてもベイルはムスッとしたまま、僕に顔も合わせようとしない。


 ブルーノ、僕はどうすればいいの?というかなんで伊織がここにいるの?と頭を抱えながら、僕の教会生活初日は終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ