36回目 フィールド・オブ・バンディット
近未来、VRによる体感システムの進歩により、
人間の神経に直接アクセスする形のVRが実用化された時代。
しかしそれはわりと富裕層でないとプレイできないゲームであった……。
ごくごく普通の中学二年生矢代弘は絶賛中二病真っ盛り、
しかしバイトもやっておらず親もコテコテの中流層であるためお小遣いもそんなにない。
同級生の三割ほどがプレイしているVRゲームの話を内心羨ましがりながら、
「俺そういうの興味ねーし!」とうそぶく毎日をおくっていた。
困ったことに弘は超が付くほどのハードゲーマーであり、
VR以外のゲームはほとんどすべてやりつくしてしまい、
今ゲーム会社の主要開発がVRゲームなため彼にとってVRという高い壁は
確実に越えなければならない障害であった。
そんな彼に声をかけてきた怪しいお姉さん、
彼女はゲームの世界を格安で体感できるフィールドと呼ばれる施設を紹介してきた。
フィールドというとサバイバルゲームなどで利用される場所という印象が弘にはあったが、
お姉さんがあんまりにも必死にお願いしてくるので仕方なく付き合ってみる事に。
装備品を選択し着替えてフィールドに踏み込むと、
そこには剣と魔法の世界と呼ぶにふさわしい広大なフィールドが広がっていた。
最初はよくできてるなーと思っていた弘だったが、
おかしいぞと気づくのにそんなに時間はかからなかった。
どうも本物っぽいのだ、魔法も、モンスターも。
NPC役の人達が妙に本気で戦っているっぽい、
そして自分もこんな動き出来るはずがないという動きができてしまっている。
果てはフィールドで知り合った少女につき合わされて乗ったワイバーンが空を飛び。
「これってVRです?飛んでますよね?」
と混乱していく。
実はその空間は滅亡した異世界の一部分を切り取ってこの世界に持ってきた物で、
弘を誘ったお姉さんも含めNPC役の人達は本当に異世界人。
本当に世界が終わるまで、ほかの世界の人達に自分たちの世界を楽しんでもらい
思い出に残してほしいという願いからこの施設が運用されているという事実があったのだが、
弘がそれを知る事になり、
その世界を存続させるための戦いに巻き込まれていくのはもう少し後の話だった。




