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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
357/873

353回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 157:魔境へと至る道(2)

 テンペスト捜索のために訪れた都市で、僕らは目の前の光景に目を疑った。

「死んでるのか?住民全員」

 ドルフが武器を構え、警戒しながら言った。


 街の異常事態に、僕らは馬車にはブロードヘインに帰ってもらい。連れてきていた僕らの馬を門の側の馬繋場につなぎ、都市の中を探索することにした。


 琥珀のダガーで生命力を探る、その都市に人間の生命力はないようだった。

 死体はまだ新しく、そこらじゅうに転がっていた。僕は死体の一つに近づくと死因を探る。

 目立った外傷はない、毒薬にしても死に方に妙に生活感があった。

 椅子に座って語り合うような状態、店の営業をしていたような状態、買い物の途中で倒れている親子もいた。

 その誰もが張り付いたような笑顔で死んでいる。


「ジョッシュ、あんま不用意に近づくな」

 そう言ってドルフは僕に布切れを差し出してきた。彼の口と鼻も布切れを結んで隠してある、感染症の可能性、それもある。

 僕は布切れを受け取り口と鼻をそれで覆いで、死体の周りを調べると、気になるものを見つけた。


「これは、宝石?」

 それは紫色に輝く宝石のようだった。よく見てみると、どの死体の側にも同じ宝石が転がっている。

 僕は宝石を一つ拾い上げ、ポーチの中に入れた。


「今のところ手がかりはこれだけか」

『紅玉の腕輪の力を使ってみたらどうだい』

「物質の指定した性質を強める力だよね、この状況で役に立つの?」

『ボクが無駄なことを君に提案したことなんてないだろ?この辺りで一番高い場所で試そう』

「高い場所か……あの見張り台の上なんて良さそうだ」


 見張り台の扉は固く閉ざされている。

 僕は近くの木に三角跳びをして、民家の屋根に飛び乗ると、屋根伝いに見張り台に近づき、見張り台の梯子に飛びついて、屋根の上まで登り街を見下ろした。


『紅玉の腕輪を前にかざして』

 パットに言われた通りにすると、紅玉の腕輪が光を宿し始めた。

『力のコントロールはボクがするから、君は意識を集中するんだ』

「集中って何に対して?」

『この都市全体に耳を傾ける感じさ』


 抽象的だなぁと僕は無茶振り感を感じながらも、目を閉じて、都市全体に意識を集中した。

 紅玉の腕輪が脈打つような感覚、それに呼応するように、僕の感覚が波打つように都市全体に広がっていくのを感じた。

「わわっなにこれ、変な感じ」

『集中!』

「はーい」


 意識を集中して、都市に耳を傾けるように。

 そう心がけていると小さな無数の声が聞こえ始めた。でも生きてる人なんていなかったはずだ。

『聞こえてるかい?残留思念を強化したんだ』

「残留思念って、そんなことできるの!?」

『リックのお兄さんの葛藤と苦しみが、塔に炎の形で残っていたでしょ?もしかしてと思ってやってみたんだ』


「凄いな……だけど、なんだかいろいろ言ってて、雑踏みたいで聞き取りにくいや。なんとかできる?」

『簡単な質問ならこちらの問いかけに答えてくれるはずだよ』

 マジか!?と驚きながらも、僕は残留思念達に問いかけてみることにした。

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