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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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335回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 139:バトルフィールド(8)

 森の中に仕掛けた古着の匂いに引き寄せられた魔王軍の一団が、森に踏みこんでいく。

 その様子をオブジェクトで確認すると、僕はリガーに頼み、森から外へ出る道を断ち、琥珀のダガーを起動した。

 地鳴りが響いたかと思うと、地面がひび割れ大穴が森を地下深くへと飲み込んでいった。


「なんだぁこりゃぁ、ジョッシュお前なにしたんだ?」

「岩盤がゆるいところを探って、植物で補強した後、それが外れたら穴が開くくらいの重量を森で作ったんだ。大きめの落とし穴だよ」

「大きめって、底も見えねえし、ちょっとした村くらいのサイズだぞこれ……」


 僕らはそれを繰り返し、三度目、次の場所についた時リガーは僕に言った。

「悪い、おいら限界だにゃ」

 そういうと彼は鼻から流れ出た血を拭って苦笑いした。

「死刃は殺意を力の源にしててにゃ、あんまりにも使い過ぎると刺激されすぎた殺意で頭がおかしくなっちまうんだにゃ」

 それで彼はあまりその力を使いたくないと言っていたのかと僕は納得した。

 オブジェクトにもリスクがある、それに近しい死刃にもそれがあってもおかしくはない。

「少しだけ休憩させてくれたら、あと一回くらいならいけるにゃ」

「ありがとうリガー、助かった。ここからは僕がなんとかするから」


 最後の一団は僕が相手をすることにした。馬を走らせると後ろからドルフの叫び声が聞こえた。

「勇足だ馬鹿野郎!」

『その通り、だね』

 パットはそう言って、でもそれ以上は口にしなかった。

 僕は別に焦っているわけじゃない、ただドルフに気づかれたくないことがあったから一人で進んだのだ。


 矢が空を裂く音が聞こえて反射的に左腕で頭部を庇った。

 敵の矢を受け止めた衝撃があったが、左腕に痛みはなかった、矢が刺さってるのに血も流れていない。

 左腕が木に変化し始めていて、変化の終わった部分に矢が命中したからだ。

 オブジェクトの副作用、これを知ればドルフは力づくでも僕を止めようとするだろう。


「心配かけてばかりだな僕は」

 それでもみんなを守りたい、そのために僕は敵の潜む森に向けて馬に拍車をかけた。


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