326回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 130:嵐までの七日間(7)
一夜明けたブロードヘインではまだ混乱状態が続いていた。
あの後爆発は止まったものの、次がいつ何処で起きるかわからないという不安が人々の心を蝕んでいる。
僕らは再び闇市に向かった。
昨日あんな爆発があったからか、人もまばらで、商売をしている者はいないように見えた。
闇市を歩いていると、一人の男が僕にぶつかってきた。
「おや、すみませんね。お怪我はありませんか?」
彼の言葉に僕が返事をしようとすると、ドルマが僕の口を人差し指で押さえ、僕の前に歩み出た。
「ああーこりゃ大怪我だぜ、まるで袋だたきにでもあったみたいにボロボロじゃねえか。どう落とし前つけてくれるんだ?」
まさか自分が当たり屋みたいな事に加担させれるとは思わず、僕はドルマを止めようと声をかけようとした。そんな僕をマックスが止める。彼は周囲を見ると僕を見た。
「武器の調達をここでやるっていうことはこういう事かもしれません」
「どういうこと?」
まぁ見ていてくださいとマックスは言って笑う。
「それはいけませんね、麻酔が必要そうだ、治療は何日ほどをご予定で?」
「今日中だ、すぐに治せ」
「それではお代金を」
そういった彼に頷くと、彼は路地裏に目配せし、そこから飛び出してきた子供がドルマに体当たりし、走り去っていった。
それから会話していた二人は何事もなかったかのように別れて歩き、僕らもドルマの後に続いた。
闇市を後にして、ドルマの率いるギャングの縄張りまで戻ってくると、マックスが口を開く。
「彼が貴方の取引先ですか」
その問いにドルマは頷く。
「取引?してたの?」
「符丁って奴だ、あそこは俺たちの敵の縄張りだからな。隠れて取引するならああでもしねえとよ」
「あの子供にスリ取らせたお金が代金という事ですね」
「よく見てるじゃねえか」
くくくっとドルマが笑う。
「あんな子供まで闇商売やってるんだね」
「稼ぎになるならなんでもやる連中が多いのさ、なんでもの範疇で寝首掻かれないように気をつけないといけねえけどな」
「取引の時間と場所はどこなんです?」
「そいつは言えねえ、お前らを疑ってるわけじゃないがお互いの安全のためにな」
武器の問題はこれで一段落のようだ、残る問題は魔王軍との戦闘が始まった後の都市の住民の避難経路の確保、そして。
僕は視線を動かし、ある人物を見つめる。
そこにはモンスターの子供達に囲まれながら、どこか物憂げな表情を浮かべたリックの姿があった。




