316回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 121:嵐までの七日間(6-2)
スラム地帯の一角でマックス、ギャングの頭であるドルマと合流した僕は、ドルマの案内である場所に向かうことになった。
「今日は何処に行くの?」
「頭数はそろってても武器がなければ始まりません、それを調達に行きましょう」
「それもだが、いざ戦いが始まった時に背中から撃たれたんじゃたまったもんじゃねえ。だから裏切り者を潰しに行く」
「裏切り者?」
僕が訪ねるとドルマは覆面の下で、思い出すだけで不愉快だという目つきをした。
「この都市には他の都市と行き来する行商人の集団がいてな、その連中が妙な動きをしてやがったのよ」
迷路のような裏路地を進み、次第に騒がしい喧噪が聞こえ始めた。
「連中いつもならこの都市を出たら半年は戻らないんだが、あのときはたった一ヶ月で帰ってきた。それからすぐにモンスター達がブロードへインに攻め込み始めた」
「たしかに妙な話ですが、裏切り者と断定するには根拠として少し弱いのでは?」
「それだけじゃねえのよ。あれ以降連中妙に羽振りが良くなったんだ。モンスターの侵攻で混乱状態、都市に来る客足が途絶えたってのにだ。連中はこの地域を牛耳って、ごろつきを集め武装集団を作り、都市内部で縄張りを主張し始めやがった」
視界が開け、僕らの眼前に広がったのはブロードへインの闇市の光景だった。
人いきれと置かれた品々の物騒さ、歩く人々の異様な雰囲気に圧倒されそうになる。
「つーことでこっからは連中の縄張りだ。いざって時は自分で自分の身を守れよ」
「都市の中にしては随分治安が悪そうな場所ですね、領主の対応は?」
マックスの問いにドルマは両手を上にして首を横に振った。
「だんまりだ、大方金でも掴ませてるんだろうぜ」
「もしかしてドルマさんがギャング始めたのってここが原因?」
「俺たちの住んでる地域まで連中が幅きかせやがったら面倒だからな。なんにせよここの連中は敵側かもしれねえ、ほっとくのは危険だろ」
僕らはそこで一旦別行動に移り、個別に闇市での情報収集をする事になった。




