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314回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 119:嵐までの七日間(5-5)
「この花が僕を呼んだんだよ、君を助けてって、そう言ってた」
「私が……植えたの、みんなが、優しい気持ちになれるように……」
「素敵な願いだね」
キルシュは優しい子だ、それにそれは彼女だけじゃない。
「キルシュ!ここにいたのか!」
リックとシバが迎えに来た。僕は涙で濡れた彼女の顔をそっとハンカチで拭くと、笑いかける。
「行っておいで」
僕がそう言うと、彼女は走ってくる二人の方向を向いて、彼らに向かって走り始めた。
『大丈夫なの?彼女目が見えないんだよ?』
心配そうにそういうパットをなだめるように、僕はポーチの中の琥珀のダガーに触れた。
よろけた彼女をリックが受け止め、そのまま抱きかかえて回転した。
寂しかったはずの花畑に笑い声が溢れる。
シバに抱きしめられ、リックに頭を撫でられ、キルシュは微笑む。
「君の願い、僕が守るよ」
誰にともなくそう言うと僕はその場を後にした。




