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312回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 117:嵐までの七日間(5-3)
ブロードへインの端、家もないもの悲しい地帯に作られた花畑の中心にキルシュはいた。
周りが真っ暗な闇の中、彼女の足下の一角に咲く花の灯す微かな明かりに包まれた彼女は、どこか悲しげな雰囲気を纏っていた。
「キルシュ、ここにいたんだ」
僕がそう声をかけると、彼女はこの間のように僕を見ると微笑む。正直な所これまで彼女のその微笑みに少しだけ得体の知れなさを感じていた。だけど今は彼女のその行動の意味がなんとなく理解できる気がした。
「怖いんだね、僕が」
簡単な話だった、彼女なりの愛想笑いだったのだ。自分の置かれた状況が理解できていないのは、他の子供達同様、彼女自身もそうだったのだ。
「私に……お仕置き、しにきたんじゃ……ないの?」
彼女は視線をそらすと、そう呟く。その仕草はまるで僕の姿が見えているようだ。
「どうしてそう思ったんだい?」
キルシュは少し泣きそうな顔をしながら僕を見上げる。
「私が……悪い子、だから」
彼女は胸に手をあて懺悔するかのように言葉を紡いだ。
「私が、リックのお兄さんを……殺したの」




