290回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 95:嵐までの七日間(2-5)
「兵士のおっさんの様子はどう?」
マックスの様子を見て部屋から出てきた僕にリックが問いかけた。
「よく眠ってるよ」
僕はポーチをさすると、パットが声を出す。
『生命力流し込みすぎてさっきまで自分も倒れてたって事は言わなくてもいいの?』
「もーパットはすぐそういう意地悪を言うんだから」
『君は気軽にやるけど一つ間違えば君の命だって危ないことしてるんだから、自覚持ってくれなきゃ困るよ』
「せめて僕に出来ることくらいはやらないとさ、付き合ってくれてありがとう」
「どうしたんだ独り言なんて言って、疲れてるんじゃない?」
リックはそう言って僕の顔をのぞき込んだ。
「大丈夫、まだ少しやることが残ってるから、まだ起きてるよ」
「そう、あんま根詰めるなよな。倒れてもちび共の世話があって面倒見てやれねえからさ」
そう言って彼は僕の背中を軽く叩くと、自分の寝床へ向かっていった。
『懸案事項だった人手については及第点くらいまでは整ったとみていいのかな?』
「うん、マックスのおかげだ。酒場の人たちの妙な連帯のとれ方、それに軍隊って現地で兵力をスカウトする事も少なくないって話も前に聞いてたから、本当は一緒にやるつもりだったんだけどね」
僕はテーブルにドルフから受け取った地図を広げると、ある地点に燭台を移動させ、ろうそくの明かりでその地点をよく確認する。
「彼のおかげで時間ができた、だから次はここに行く」
『この地域は手に負えないから触るなって、荒っぽい文字で殴り書きしてあるよ?』
「かなり変わった民族のモンスターがいる場所みたいで、うかつに手を出すと接触しに行った人たちが全滅するかもってドルフが念押ししてたよ」
だけどね、そう言って僕は地図に小石を並べ、パットに状態を説明する。
「この地域のモンスターに協力して貰えれば、僕らはかなり有利に戦況を動かすことが出来ると思うんだ」
『止めたって君は行くんだろうから止めはしないけれど、君の興味ってそれだけじゃないでしょ』
「え?そう?そんな事ないと思うけどなぁ」
自分でもわかるくらい僕は挙動不審になった、パットにはもしかすると僕の心の中がまるっとお見通しなのかもしれない。
「サラマンダーを味方につけることができたら、たしかに心強いにゃ」
そう言ってリガーがそばにあった椅子に座って、鼻息荒く僕を見た。そう、ここにいるモンスターはサラマンダー!あの火属性の代名詞とも言えるサラマンダーなのだ。エンチャントファイア……ああ恍惚としてしまう、炎の魔法!見たい、できれば友達になりたい!
僕はリガーの手をがっしと握り握手をすると。
「じゃあ一緒に行こう!明日!!二人で!!」
と彼に言った。




