286回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 91:嵐までの七日間(2-1)
魔王軍の侵攻まで残り六日。
僕はマックスに作戦の概要を説明し、兵士である彼の意見を聞いていた。
「よくできていると思います、この状況ではこれ以外に手段はないかと。しかし気になるのは、このライン。地形的な障害もないこの地域が開けてあるのはなぜですか?」
「ドルフに考えがあるらしくて、彼の提案でこの形にすることにしたんだ。ほかのポイントで魔王軍の兵力をそぎ落とし、ここで彼が迎え撃つ」
「彼の率いる部隊の損耗が一切なかったとしても百人で、多少損耗させられたとして、千の兵力を受け止めると」
マックスの目は温和な彼からは信じられないほど鋭い殺気にも似た圧力を感じた。それは僕に向けての圧力ではなく、それだけ彼がこの問題に対して真剣に考え、そしてこの提案に対する疑念を捨て置けないという意志の表れである事を僕は感じた。
「不安?」
僕のその問いにマックスははっと我に返ったような目をして、ばつが悪そうに目を伏せた。
「申し訳ありません、自分にはまだモンスターを信じることはできそうになくて」
「いいんだ、みんなそれぞれできる範囲で進めていこう」
「ジョッシュ、貴方は彼らを信じるんですね」
「友達だもん。それに命がけのお願いを聞いてくれるって言うなら、僕も応えないとね」
僕のその言葉にマックスの表情が和らぐ。
「貴方がそう仰るなら、自分もこの作戦に全霊をかけましょう」
「その言葉が欲しかったんだ!今僕一人じゃどうしても行き詰まってる問題が一つあって」
「人員の問題ですね」
「やっぱりわかる?」
「ええ、さすがにこちらの人数が三百では。それに中隊の指揮権は領主にありますし、こちらの指示で動いてくれる勢力が必要です」
「ただこれが厄介でね」
「貴方の救助の助力を頼んでも誰一人聞いてくれる様子はありませんでしたからね、でもあのときと今では状況が少し異なります。このブロードヘインにも元々は兵士達がいたはず、彼らを見つけ出すことができれば勝算はあります」
マックスは立ち上がり、自らの胸を叩いて僕を力強い視線で見つめた。
「お任せください、必ず集めて見せます!」
そう言うと彼は重量感のある鎧の金属音を軽快に鳴らしながらアジトの外へと向かっていった。
「あっ僕も一緒に!」
「お構いなく!こちらはどうぞ自分にお任せを!!」
そう叫んで彼は勢いよく走り去っていって行ってしまった。




