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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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284回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 89:胸に抱くべき希望の形(5)

「それでお前さんがなにやら企んでるのはわかったが、具体的にはなにしようってんだにゃ?」

「この都市が抱えてる問題は二つ、この都市を攻め落とそうとしている魔王軍による侵略、ディアナ公国に混沌浸食の影響を与えているオブジェクトの存在。そしてそのオブジェクトを奪取するには、大罪の悪魔を倒さないといけない」

「だがその悪魔にはこの都市の住民総勢二万の意思が力を与え続けてる、対処するには大罪魔法を持った七獣将が来るくらいしか方法はない、と」

 僕の言葉を補足するように、ドルフはそういうとうーむと思案する。

「俺や俺たちの部族が総出になってもおそらくどうにもできねえぞ?」

「一つだけ方法があるんだ、一番シンプルなやり方で」

「なんだか嫌な予感がしてきたにゃ……」

「二万人の意思の力を分散させるには、この都市が抱えている問題を排除すればいいんだ」

「って事はまさか」

「僕らで魔王軍の軍勢を追い払うって事」

「ばーっかじゃねえのかにゃ!無理だってわかってることなんでやろうとするのか理解できねーにゃ!」

 ほら見ろと言わんばかりに顔を不愉快そうにしわだらけにしながらリガーが僕を指さして責め立てる。


「まぁそんなこったろうと思ったぜ」

 顔を真っ赤にしているリガーとは裏腹にドルフは冷静だった。

「とはいえ俺の手札じゃ勝率は三割ってとこだ、それはお前も里を見てるんだからわかるだろ?」

 ドルフの里はかなり大きかった、しかしそれでも戦力として当てにできるのは百といった所だ。兵士の中隊の人数と合わせても三百、この人数では千の軍勢相手には押し負ける。


「そこでリガー、君にも協力を頼みたいんだ」

 この場から逃げ去ろうとしていたリガーは、僕の言葉にビクンと全身を弛緩させこちらをおずおずと振り返った。

「お……おいらはただの盗賊だにゃ、できることなんてたかがしれてるにゃん」

 そう言ってリガーは可愛らしい仕草で毛繕いをしてみせはじめた。おお、猫が猫をかぶろうとしている……。

「隠そうったってそうはいかないよ持ってるでしょ、なにかオブジェクトみたいな特別な力の物」

 僕のその言葉にリガーは招き猫のようなポーズで固まり、滝のような脂汗を流し始めた。

「ななな、なんの事かにゃー?言いがかりはやめてほしにゃー」

 そういって口笛をピューピュー吹き始めるのが余計にわざとらしい。


「ジョッシュよう、こんな奴本当にあてにできんのか?」

「できるよ。だってモンスターの砦破壊したのリガーだもん」

「なんだと?」

 ドルフの刺すような視線にリガーは縮こまり、食べないで欲しいにゃ!と小声で言った。

「いくら泥棒として隠れて工作するのが得意だっていっても限度があるよ、それに砦の破壊の功績を僕に押しつけた、って事はギルドに知られるとまずいなにかしらの事情があるって事。つまりオブジェクトの私物化か、それに準じるなにかか……」

「わかった!わかったにゃ!!はいはい持ってます、オブジェクトみたいな物持ってます」

「それを使うとリガーの事を誰も追いかけられなくなるとか、そういう効果なんだよね?」

「まぁ大体そんなとこだけどにゃ」

 そう言ってリガーは円月輪のような武器を取り出した。


「おい、それ。あいつの持ってた武器と似た匂いがする」

 ドルフは表情を険しくし、唸り声を上げ始めた。

「あいつって、あのときの黒騎士の?」

 グレッグを昏睡状態にした闇の血統ダークブラッドの黒騎士の剣、死の具現、ニュクス。その一つをどうしてリガーが?

「あいつらはこれを死刃とも呼んでてにゃ、おいらのはこう」

 そう言ってリガーが円月輪で空を裂くと突風が吹き荒れ、次の瞬間木の葉にかき消えるように彼の姿が消えた。


「とまぁ道の死を司る能力があるんだにゃ」

「うわ!いつのまに後ろに!?」

「今のはジョッシュとドルフからおいらにつながる道を絶ったんだけども、まぁいろいろやろうと思えば」

 あんまり使いたくはないんだけどにゃーと、ちぇっというようなそぶりでリガーは言った。


「悪くねえじゃねえか、あともう一つ二つ決め手が欲しいな」

「僕にいい考えがある、困るとすればもう少し人手が欲しいところだけど、それもなんとかしてみるよ」

 僕はドルフを見る。

 ドルフは肘を直角に曲げて僕の前に差し出した、僕はそれに自分の腕を組み、リガーの方を見た。

「ほらリガーもやっとこう」

「おいらの年だと、ちょっと恥ずかしいにゃ……」

 本当に恥ずかしそうに耳をたおし顔を赤らめながらも、彼も僕らの腕組みに参加した。

「タイムリミットは七日後だ」

 ドルフがそういった。

「それまでに打てる手をありったけ使うよ、勝ちに行こう!」

 おーっ!!

 僕らは叫び声を上げた。覚悟はもう決まった、あとは全力を尽くすだけだ。

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