278回目 砂紋の情景
光が失われ、砂漠のようになった広大な大地に、ごく限られて存在する光る砂だけが失われない光である世界。
人々は砂を求め時に協力し、時に裏切り、争いながら生に執着し続けていた。
電灯を使っても植物を育てることができない。
壊砂と呼ばれる腐食性の砂によって建物も人も風化させられ崩壊してしまうため、人々は限られた場所で生活していた。
地形の影響で常に雨が降り続けている渓谷
風と河に守られた中洲
地下に作られた核シェルター
都市の中の壊れかけたショッピングモール
生物を生きたまま崩壊させると21グラムだけ光る砂が取れる。光る砂は人の魂なのではないかという人間もいる。
この世界のどこかにある母親の魂を探して旅を続ける少年がいた。彼には光る砂から声やヴィジョンを受け取る力があり、その力を頼りに微かな手がかりを辿り旅をしていた。
「君は世界の果てを見たことがあるか?」
果てから少しずつ世界が失われつつあった。それを誰も知る由もない。闇の獣を引き連れた黒衣の男たちが、伝道師を名乗り世界の果てと終わりを人々に知らせて回っていた。人々の想いを終わらせ、死への準備をさせるためだと彼らは言う。
想いの終わりを決めるのは自分の意思でなきゃならない。そう言って少年は旅を続ける。その先が果てない闇だとしても、彼の意思は今も鼓動を続けている。




