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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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272回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 80:護るべき大切な人のために(21)

「なにぼさっと突っ立ってんだよ!」

 僕の背中を叩く肉球の感触、背後から黒い獣人が飛び出した。

「リック!あれが君の言ってたクリーチャーなの?」

「そうさ!早く来ないと置いてっちまうぞ!!」

「うひょーう!!」

 そう叫びながら後から続いて何人ものモンスターの子供達が都市の中をパルクールで縦横無尽に走り回り始めた。子供離れした体力はやはりモンスターであることも関係しているのだろうか。僕はリックの姿を見失わないよう、おっかなびっくりながらも階段を飛び降り、建物の屋根づたいに走り、煙突を駆け上って、洗濯紐めがけて飛び降りると、足でそれをひっかけて滑り降りて高速で移動していく。

「や、やればできるもんだなぁ」

「俺についてこられるなんてやるじゃんジョッシュ」

「無茶ぶりにもほどがあるけどね!」

「ジョッシュ!私は下の道から行きます!」

 マックスは僕にそう叫ぶ。

「何かあったら呼んで!すぐに行くから、一人で無茶はしないで!!」

 僕のその言葉に彼は簡単な敬礼のようなポーズをすると走り去っていく、恐らく被害者が出ないようクリーチャーとの間合いを詰めて警戒を行うつもりなのだろう。

「よそ見してるとぶつかるぞっと」

 リックのその言葉に彼の方を見ると洗濯紐の繋がった石造りの壁が目の前に迫っていた。

「ひぇええ!!」

 僕は紐を飛び降り空中で体を捻ると、両足で壁に着地、重力が体を地面に引くのを感じてそのまま宙返りの要領で飛ぶと、リックがそうしているように階段の欄干に靴を引っかけて滑り降りる。

「熱っ靴底燃えてる燃えてる!!」

 空を見るとクリーチャーが怪音波を地上に向けて照射し、その軌道に沿って空気が歪み、建物が粉砕されていくのが見えた。その攻撃のパターン、そしてそこに時折垣間見える人物から僕はある事に気づく。

「あのクリーチャー、もしかしてリック達を狙ってる?」

「正確にはあんたも対象だぜ、あれは余所者を全員始末しようとするんだ」

 モンスターからの防衛が成功してるのってあれも一因なのかもしれない。万一忍び込んだとしても、夜になれば殺しに来る守護者。それがあのクリーチャーなのだ。

 どこかで悲鳴が上がる。

「ちぇっシバの奴ビビりすぎなんだよな」

 そう言いながらリックは建物の蔦を掴むと、それを使って壁を走るように登っていく。僕は彼の後を追おうと滑り降りる勢いを利用して、小川を飛び越え半壊した建物に入り階段を上り屋上へ出た。

 シバが次々に破壊される屋根を飛び越え、涙目になりながらクリーチャーに追われて走ってくる。

「兄貴ぃ!!助けてぇえええ!!」

「情けない声出してんじゃねえぞシバ!!」

 足を踏み外して落ちかけたシバに向かってリックは肩にかけていた鞭を使い彼の足を絡めとり、そのまま明後日の方向へ放り投げた。

「うぎゃぁあああ兄貴ぃいいいい!!!」

「えぇ!?いいのあれ?」

 リックは耳をすませてシバが飼い葉の山に落ちる音を聞くとガッツポーズする。

「我ながらナイスコントロースだぜぇ、おい、早く行かないとアイツの狙い今度は俺達だぞ?」

 そういって事も無げに屋上から飛び降りるリック、きょとんとしているとクリーチャーの影が僕にかかり見上げると蝙蝠の凶悪な面がよだれを垂らして僕に怪音波を放とうとしていた。

「これじゃ今度は僕がシバの立場じゃないかぁ!!」

 僕は屋上を逃げ回ると、急にクリーチャーが旋回し遠ざかっていくのに気づき、クリーチャーの進行方向を見た。

 そこにはモンスターの小さな子を抱えて走るダーマの姿が、クリーチャーはダーマと子供に狙いをつけた。

「いけない!!」

僕は助走をつけて屋根から飛び降り、琥珀のダガーを引き抜いて眼前へとかざした。

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