264回目 寄生する遺伝子
近未来の日本、宿主の遺伝子を感染者に付与していくあるレトロウィルスによるパンデミックにより、この世界のあり方は少し変化した。
ウィルスを注射するとDNAが書き換えられて血縁関係になれる。近未来は結婚や出産を行う方が少数派であり、養子をDNAインプラントで実子にして家族として生活していた。子供を産んでは捨てに来るのはもっぱら学生だったが、誰もそれに関して文句を言うものもいなかった。
孤児院が昔でいうところの保育園に近い扱いとなっている。跳ねっ返りで引き取り手のなかった俺に打たれながらも、親父は俺がいいと笑って家族に迎えてくれた。
父親が死んで、DNAのインプラントをした。親父の主義でなのかインプラントされていなかったが、俺は自分の中に親父が生きた証が欲しいと思った。遺伝子は民族の親から子へと受け継がれるタトゥーのような物だ。この世界の誰もが不要とした俺との絆を求めた親父に対して、俺ができる唯一の恩返しのように思えた。
遺伝子が個人の人格形成に影響を与える、なんて都市伝説的な噂もあったが、その影響が出始めたのか俺はミステリー研究会の部室で探偵の真似事を始めるようになった。そこで俺は様々な出会いを迎える。
インプラントした遺伝子に大量絶滅をもたらすレトロウィルスの原体が含まれていて、そのウィルスが自らを悪魔を名乗り学生の姿でミス研に入部してくる。彼女は自らがウィルスとして覚醒する為に俺に接触し続ける。不活性状態ではあるが俺が行く場所の人間すべてにウィルスが感染し、彼女を知覚することができるようになっていく。
父が俺に隠していた殺人衝動が遺伝した。父親もどうも自分の知らない間に殺人を繰り返していたらしく、父の殺し屋としての相棒を名乗るアニマルマスクの男から接触を受け、彼が育てている殺し屋見習いの少女が学園に転入してきて、人間性を学ばせるために彼女の学園内での面倒を見ることに。
孤児院時代からの付き合いの幼馴染みと再会し良い関係になるが、実は父の子供で、実は父は彼女を探しに施設にきたが一足違いで、そこに俺がいて彼は俺を自分の子供にした。遺伝子のインプラントを行ったことで彼女と結ばれることができなくなったと判明するが……




