262回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 73:護るべき大切な人のために(14)
「おいおっさん俺の財布返せよ!」
「お、来た来たにゃぁ」
「その声はさっきリガーが捕まえてた子かな」
僕らが声の方を見ると、崩れかけの建物の上に先ほどの犬獣人の少年がいた。彼は顔を真っ赤にしてリガーを指さし激怒していた。
「知らないにゃー誰かさんの落とし物なんて」
リガーの懐をよく見ると、そこには見慣れない誰かの財布が一つあった。
「リガーやっぱりちょっと大人気ないんじゃない?」
「まぁまぁ見てなってにゃ」
「お前が世話になったって人間はこいつらかシバ」
「リックの兄貴!!」
シバと呼ばれた犬獣人は顔をぱぁっと明るくして現れた黒豹獣人の子供を見た。
「面倒かけたねおっさん、こいつ盗み方下手でしょ」
「兄貴!?」
リガーはその言葉に苦笑いして答える。
「あーそこらの一般人でも普通に気づいちまうにゃ」
「そうだったの?」
「おいらだったから運はよかったけどにゃ、普通なら即あの領主に突き出されてたと思うにゃ」
そういってリガーは懐から件の財布を取り出してヒラヒラとさせた。
「あっそれ俺の財布!!」
「スリっていうのは相手に気づかれずにやるもんだにゃ、俺はもうそんなケチな真似しねえけどよ」
「ははっ、間違いないや。一応確認なんだけどさ、おじさんそれ盗んだ理由って俺達をおびき寄せるためだったりする?」
「ジョッシュがそのシバって奴をモンスターとして見てたなら、話くらい聞いとかなきゃならないしにゃ、案の定そっちからこっちに接触しに来てくれたにゃ」
そういうとリガーはリックに財布を投げて渡す。
「あっ兄貴!俺の財布……」
「ばーかお前盗みはやめろってあんだけ言ったろ」
そういってリックはシバの頭を殴る、痛ってぇと言ってシバはしょぼくれた顔をしたシバはその名の通り柴犬のような雰囲気で、なんだか可愛く思えた。
物音に気付きそちらを見ると、物陰に身を潜めていた様々な獣人の子供達が棍棒を片手に姿を現し、僕らの周囲を包囲していた。
「悪いねここ俺達のアジトなんだ、囲ませてもらったから逃げらんないよ」
「そりゃ困ったにゃ」
僕とリガーなら難なく脱出できる状況ではあったけれど、僕はリガーに調子を合わせることにした。
「君たちは何が望みなんだい?」
「お兄さんたち闇ギルドの冒険者だろ?領主からアレを取り返す手伝いをして欲しいんだ」
リックは胸元からミスリルプレートを取り出して見せると、燃え盛る塔を指さしてそう言った。




