261回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 72:護るべき大切な人のために(13)
「モンスターどもが攻めてきました!領主様お願いします!!」
僕達ににじり寄っていた男はそういわれると、踵を返し、手にしていた杖を地面に突いた。僕は視界の中の燃え盛る塔の炎がそれに呼応するように揺れ動くのを見た。次の瞬間どこからともなく現れたマックスと同じ鎧を全身に纏った男達が何十人何百人と都市を走り抜けていく。
「この人たちがディアナ公国の貴族が言ってた行方不明の兵士さん達か、無事……だったんだよね?」
僕はどうにも確証が持てず言葉を濁す、彼らの様子がどうにもおかしいのだ。一個人の集団というよりも、あまりにも機械的で、意識を感じさせない。
「ジョッシュ、今のうちにここを離れるにゃ」
「え、ああ、うん」
領主達の気がそれている間に、僕は兵士でごった返す道の中を通り抜けてその場を後にした。
「ちょっとばかし面倒な事になってそうだにゃぁ」
「兵士さん達なんだか様子がおかしかったね、でもみんな無事でよかった」
「あー……ちょっと言いにくいんだけどにゃ」
「どうかした?」
「あれ全部死んでるにゃ」
「え、でもみんな元気そうだったじゃない」
「リビングデッドって事にゃ、鎧を着てるから見た目にはわからないし、なぜだか腐敗もそんな進んでないようだけども、明らかに連中全員死臭がしたにゃ」
「あの中にマックスさんの知り合いもいるって……」
「やっこさんには残念な話だけど、あれはもうダメだにゃ。カオスオブジェクトに操られるだけの屍。混沌浸食を都市の防衛に利用しているなら、あれに対して誰も気にも留めていない事も説明がつくにゃ」
僕は息をのんだ、そして脳裏にマックスの姿が浮かぶ。都市の外で大規模な戦闘が始まり、僕らは高台からそれを見つめて立ちすくむしかできなかった。




