259回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 70:護るべき大切な人のために(11)
「どういう事なんだ?」
街の中の様子を見て僕は思わず唖然としてしまった。混沌浸食に飲まれているはずのその街は、まるで何事もないかのように活気に溢れていた。燃える塔を誰も気にしている様子もない。不思議な気分になりながらも、僕は馬を預けると街の中を散策し始めた。
「はーなーせー!!」
「うっせぇにゃ!このクソガキ!!おいらから財布盗もうなんて100億年早いんだにゃ!!」
リガー特徴的な喋り方に気づき、その騒ぎの元へ人ごみをかき分け近づくとそこには小さな犬獣人の子供をつるし上げているリガーの姿があった。
「リガー!」
「おっ、ジョッシュにゃ!お前無事だったのか、よかったにゃー!」
「マックスさんは?」
「あいつは街の逆側に行ったにゃ。この街の住民達薄情でにゃぁ、お前を助ける手助けをしてくれる奴が一人もいなくってにゃ。方々声かけて回ってたらコイツが俺の財布を盗みやがったんで、お灸据えてるとこにゃ」
「いい歳して語尾ににゃーにゃーつけてる人間のおっさんに捕まるなんて……」
「近頃の人間のガキはよーしつけがなっちゃいないにゃー」
「リガー子供相手に大人げないんじゃない?」
と口にしてはてと気が付く、どうも二人にはお互いがお互いに人間に見えてるらしい。
「君ギルドプレートは持ってないように見えるけど、ギルドの関係者?」
犬獣人の少年は僕にそう尋ねられギクッとした表情で僕を見た。
「あんちゃんもしかして俺の正体見えてるの?」
「うん、一応」
わかりやすいくらい少年の顔は青ざめ、滝のような汗を流し始める。
「なんにゃ?どういう事にゃジョッシュ」
「おやおやおやぁ?いけませんね、揉め事ですか?」
リガーに説明をしようとした所に割り込むように、ぬったりとした声で一人の男が話しかけてきた。




