253回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 64:護るべき大切な人のために(5)
「ガハハ!一人で俺らを相手にしようなんざ、なかなか度胸据わった兄ちゃんだぜ!!」
あのひと騒動の後、僕は虎獣人達に拉致されるような形で彼らの村に招かれ、一緒に食事をすることになった。
「ねぇドルフ、君なんで強盗の手伝いなんてしてたのさ」
僕は酒に酔って僕を抱きかかえていた中年の虎獣人の手から逃れ、ドルフに耳打ちする。
「今人間がブロードヘインに行くと酷い目にあわされちまうんで、足止めして回ってるんだ、強盗じゃねえよ」
そういうとドルフはしゃっくりをして、冗談を言った虎獣人の話に馬鹿笑いをしながら酒をあおった。
「あとあれだ、本当に襲うつもりならまず御者から狙うだろ?」
「それはそうだけど、馬を狙わなかったのは?」
「ばっかやろう、助けてやった礼に貰う馬を殺してどうすんだよおめー」
「やっぱり強盗じゃない?」
「なんだとコラ、よーし表出ろや」
おー喧嘩かー!?やれやれー!!とはやし立てる虎獣人達、その中の一人の若い虎獣人が酒瓶とジョッキをもってドルフの元へやってくる。
「ままま、まずジョッキにこいつを注いで……」
「お?おお、おう、悪いな、とととっ」
かんぱーい!とその獣人とジョッキを打ち鳴らし、ドルフは酒を飲んでガハハと笑う。よろけた彼を支えて地面に座らせた。
「まぁお前も飲めや、小難しい話は明日にしようぜ」
そういうと彼は酩酊した顔で笑った。まぁ確かにこんな盛り上がってる場所で聞くのも野暮かなと考え直して、僕も一口酒を飲む。
「うわ、口が焼けそう!!」
物凄くアルコール度数が高くて目が回りそうだった、こんなのをぐびぐび飲んでる虎獣人の内臓はどうなってるんだろう。グレッグもお酒飲んだからここにいる人たちみたいに愉快になるんだろうか?なんて思うとついにやけてしまう。そんな中僕は視線に気づいてそちらを見た。黄色と黒の縞々模様の中でひときわ目立つ真っ黒な毛皮に筋骨隆々な巨漢、隻腕の黒豹獣人が僕を見つめていた。




