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245回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 56:冒されざる秘枢(3)
竪琴を奏でる少女がいた。彼女の耳にはその国に暮らす住人達の心が音として捉えられている。一つ一つの心の音が音階となってメロディとなって、彼女の耳に聞こえ続けていた。
少女は小さく息を吐くと、そのメロディに合わせるように竪琴を奏でる。
彼女の指がふと止まる、その原因は彼女の耳に届いたあるメロディだった。それは優しく、美しくて、温かい。
「耳障りな音……」
そういうと彼女は竪琴を再び奏で始めた。
空を眺め、真っ赤な火のような光になった空の日輪を見上げて。燃えろ、燃えろ。こんな世界など燃え尽きてしまえ。そう願いながら彼女は人々の憎しみに寄り添うメロディを奏でるのだった。




