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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
異世界勇者の解呪魔法
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232回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 43:追憶の森(38)

「ここでお酒を入れてフランベ!」

 フライパンにお酒が入った瞬間火柱が上がり、それを見ていたグレッグがおおっと声を上げる。お昼時、僕はグレッグにもっと僕の料理が食べたいとせがまれて、ギルド酒場のキッチンを借りて料理をしていた。僕の方も朝に料理をしたら気持ちが盛り上がってきていたので望むところという奴で、つい熱が入ってしまう。


「はいビーフシチュー出来上がり。食べてみて」

 そういって僕はグレッグにシチューの入った皿を出し、エプロン姿で隣に座る。

「変わった匂いだな、うん。いただきます」

 物珍しそうにシチューの匂いを嗅いだ後、グレッグは手を合わせてそれをスプーンですくって食べる。

「食べたことない味、なんだか妙な感じ。だけどどうしてだ、体がシチューを口に運ぶのを止められねえ!」

 グレッグのその様子に周りのモンスター達も興味を持ったようでぞろぞろと集まってくる。

「味はどう?」

 期待半分不安半分でグレッグにそう尋ねると、彼は満面の笑みでため息をつき「うまぁ~」と僕に言った。

「よっし!」

 僕は思わずガッツポーズをする、そんな僕を見てマスターは笑った。なんだか照れくさくなり彼を見ると、マスターは腕を組んで僕とグレッグの顔を見て言った。

「お前らいい顔するようになったな」

「そうかな?なにか変わった?」

「自分では自覚ないもんだからわかんねえとは思うけどな、所で後ろの連中にもこいつ出してやっていいか?」

 そういわれて後ろを振り返ると、そこにはよだれを垂らした猛獣の如きモンスター達が物欲しそうな顔をして人だかりを作っていた。

「もちろん!僕も手伝います、このままじゃ食べられちゃいそうだ」

 苦笑いして席を立つと、グレッグが僕を呼び止める。

「俺にもおかわり貰えるかジョッシュ」

 甘えるようなその表情、勢いよく振られる尻尾が愛おしくてたまらない。僕は彼に思わずデレっとした顔をして「いいよ」と差し出された皿を受け取った。


「人前で堂々とイチャつかないでほしいにゃぁ」

 その声の主はリガー、そして傍らにはボーディがいた。ボーディはやはり病院外ではヒャッハー状態だ。違いというと服装はもちろん、表情、そして彼の頭のトサカのような鱗は、病院の中では寝ているが、今の状況だと起き上がっていてまるでモヒカンのように見える。

「お、俺もう我慢できねえよリガー。腹が減って暴れたくてしかたねぇんだヒヒィッ」

「こんな有様なんでこっちにもよろしくにゃ」

「了解!」

 僕はボーディとリガーに皿を運び、グレッグにおかわりの皿を渡す。皿が来るとすぐにボーディはシチューを犬食いし始める。

「あーこらまた口元から垂らして……だらしないにゃぁ」

 そう言いながらボーディの口周りをハンカチで拭くリガーを見て僕とグレッグは思わずニヤニヤする。そんな僕らに気づいてリガーは目を細めながら不満ありげにこっちをみた。

「僕らにイチャつくなって言った割には」

「お前らも大概だよなぁ」

「二人して同じ表情でにんまり見られると、すっげえムカつくにゃー!!」

 そのリアクションがあまりにも面白くて僕とグレッグはリガーとボーディに指をさしながら笑う。

「にゃー!指指すなコラぁ!!」


 和気あいあいとする僕やモンスター達の集団を見ているマスター。

「以前じゃありえない光景だ、ましてや人間のお前がいる状況でなんてな」

 彼は感慨深そうな表情を浮かべる。

「お前を見てると俺達にも未来あしたがあるんじゃないかと思えてくるよ」

 僕はその言葉の意味が理解できずキョトンとしながらシチューをよそう。カウンターの向こうからモンスター達がこっちにも早く持ってきてくれと催促する。「あいよー」とそう答えながら僕は両手に皿をたくさん抱えてカウンターを飛び出した。

「にしてもこいつら家族みたいだな」

 マスターはそんな僕らを見てそういって笑った。

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