231回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 42:追憶の森(37)
朝まだ眠っているグレッグの頭を撫でると、子供みたいにくしゃっと笑顔になって、彼は僕の顔を舐め回した。
「寝ぼけ方もすごいなぁ」
よだれまみれになった顔で僕は笑う。
「さてと」
僕は顎に握りこぶしを当ててグレッグの家の中を見回すと、吊るしてある干し肉と、薬草を見つけて頷く。
それからしばらくしてグレッグが部屋を満たし始めた料理の匂いに目を覚ました。
「う……ん?なんかいい匂いがする……」
寝ぼけ顔で頭を掻きながらグレッグは僕を見ていた。気の抜けたその表情が可愛くて僕はつい笑ってしまう。
「食材少し使わせてもらってるよ」
「台所なんかでなにやってんだ?」
そういって彼が僕の肩に顎を乗せ、僕の手元を覗き込んだ。僕は気にせずに鍋の中のアクを取り除き、干し肉と薬草のスープの味見をする。
「干し肉の塩味が強かったから味付けはこれで十分かな、意外と薬草も良い味出してる」
僕はそう呟きながら、鼻をくんくんとさせながら鍋に顔を突っ込みそうな勢いのグレッグに小皿に取ったスープを差し出した。
グレッグは小皿の中身の匂いを嗅ぐと、僕に注がれるまま口の中にそれを入れ、目を丸くして、舌なめずりした。
「うんめぇ」
「へへへ、じゃあ朝食にしようか」
僕らはテーブルに向かい合って座り、干し肉と薬草のシチューを食べ始めた。グレッグはよっぽど気に入ったのか、テーブルに置いた鍋から次々におかわりをよそっている。
「お互い病み上がりだし、薬膳料理って奴だけど気に入ってもらえてよかった」
「サンキューなジョッシュ、このスープ飲めば飲むほど体に染みるぜ」
グレッグは僕の顔を見るとにまっと笑って尻尾を振りスープをすする。角の生えた大きなわんこみたいで可愛くて、僕は彼を押し倒して撫でまわしたくなる衝動を抑えながら、自分もスープを飲むのだった。




