228回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 39:追憶の森(34)
「すげえ大盛り上がりだったな」
バーベキュー会場からの帰り道、腹をはち切れそうなほどに膨らませたグレッグはしみじみそう呟く。
「モンスターも人間もなくこうやってバーベキューパーティやれるのって凄く楽しいね」
「そうだな」
そういってグレッグは僕を静かに見つめる。
「お前が来るまでこんなに楽しい気持ちになる事なんてなかった」
「そうなの?」
僕はなんだか照れくさくなって彼から視線をずらした。なんだか顔が熱くなってる気がする。そんな僕の頭をグレッグは優しくポンポンと撫でる。
「いろんな事が動きだした、俺もようやく少しだけ変われそうなんだ」
ずっと自分がどこにいるのか、どうしたいのかわからなかった。遠くを見ながら彼はそういった。
「お前のおかげで俺はあの日から囚われ続けていた暗い森の中からようやく抜け出せたみたいだ、感謝してるぜジョッシュ」
「相棒だもん、当然だよ」
「生意気言いやがって」
ははっと笑い声をあげてグレッグは僕の肩を勢いよく抱いて、僕は彼の体に少しだけもたれかかって、彼の歩く速度にあわせて歩く。グレッグの毛皮がふわふわでその体温も相まって温かくて、その下のゴツゴツした筋肉の感触が珍しくて、僕はそれを顔面と手で触れて撫でまわしてみた。
「お、おい。こしょばゆい、やめてくれ」
「体が勝手に動くんだから仕方ないんだ、諦めて!」
やいのやいのと騒ぎながら、僕らはグレッグの家へとたどり着いた。




