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226回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 37:追憶の森(32)
「迷子かな、君の名前は?」
「パット」
パットと名乗ったネズミ獣人の少年の声はどこかで聞いたような響きだった。彼は落ち着いた目で僕を見ている。
「次は君が名乗る番だ」
「僕?僕はジョシュア」
そう答えると彼は静かに首を横に振る。
「君の本当の名前さ」
この世界に来る前の僕の名前という意味なのだろうか、僕は奇妙な気持ちになりながらも彼に答える。
「雄馬、山桐雄馬だよ」
「ユウマか、覚えた」
彼の声にはたしかに聞き覚えがある、それは森の中、そしてあの砦で聞いた声だ。
「少し歩きながら話をしようユウマ」
そう言うと彼は人混みの中を歩き始める、あとに続きながら僕は琥珀のダガーに触れながら彼に声をかけた。
「ねぇ君、いろいろ助けてくれてありがとう」
その言葉にパットは少し驚いた顔をして振り返り、優しく微笑む。彼はどこか寂しさを感じさせる不思議な少年だった。




