224回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 35:追憶の森(30)
人気のない場所に来るとマスターはおもむろに葉巻に火をつけ、紫煙を燻らせながら口を開いた。
「ジョッシュはやはりアウトサイドの存在で間違いなさそうだな」
「ああ、アバター化を確認した。今まで能力が発現しなかったのはアイツのクラスに対応する武器を所持してなかったからだろう」
「となるとアイツは人間達からすると格好の餌食だな。連中はアウトサイドの存在を見つけ次第頭をいじって自分たちの道具にするって話だ、少なくともアイツの居場所は人間の世界にも存在しないことになる」
マスターはグレッグの目を見る。
「俺が預かることもできるが、どうする」
グレッグは真っすぐな目をしてマスターに答えた。
「あいつには返さなきゃならねぇものが沢山ある」
彼は胸を叩き拳を握りしめ、その瞳は熱く燃えている。
「守り切って見せるさ」
グレッグはこの世の全てに布告するようにそういった。
「お前がそういうなら俺にはもう何もいう事はないが、不味い事になりそうな時はいつでも言ってくれ、力になる」
「面倒はかけねえよ、やれるさ、俺とアイツなら」
曇りのない表情でそういう彼を見てマスターは微笑み呟く。
「ようやくモンスターらしからぬ善意をやり取りできる相手が見つかったか」
「何か言ったか?」
「うんにゃ、ジョッシュの坊やのおかげで気苦労が減りそうだと思っただけだよ」
なんだよそれ、そういうとグレッグは不満そうに口を尖らせる。そんな彼の様子を見てマスターは声を出して笑うのだった。




