221回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 32:追憶の森(27)
マスターに誘われた僕らは街の中にある広場に向かった。
法螺貝を吹いているモンスターがいる、音階で遠くになにかしらの伝令を伝えているようだった。キャンプファイヤーのようなうずたかく積み上げられた薪があったり、肉を焼くコンロのようなものが大量にあってこれは。
「バーベキューパーティでもやるのかな?」
そう呟きながら僕は肩に背負った大量の食材を指定された場所に下ろした。
「あー肩にヒモが食い込んで痛かったぁ」
肩をさすりながらそうぼやいていると、グレッグが僕の頭をぽんぽんと撫で、僕の5倍くらいはある大量の荷物を横に下ろした。
「グレッグすっごいね……」
彼は感嘆する僕に得意顔で腕組みしてえへんとしてみせた。なんだか可愛い。
日が沈み始め、だんだん人が増えてきた。会場の中心の薪の山に火がつけられキャンプファイヤーがはじまる。
「こういうのっていくつになってもワクワクしちゃうなぁ」
「お前といると俺もこういう事が楽しく思える、なんだろうなこれ」
はてなと首を傾げるグレッグに僕はそれとなく身を寄せる。グレッグの尻尾が僕の体を抱くように巻き付いて、彼は僕の肩にその手を乗せた。
「あれ?」
ふと僕はその時会場が妙な状況であることに気づく、モンスターだけじゃなく人間も少なくない人数参加しているのだ。
「どういう集まりなんだろ、グレッグ心当たりある?」
「俺も初めてだ、人間連中に心当たりがないわけでもねえけどよ」
そんな会話をしていると大きな声で中年の人間の男性が何人かを引き連れて僕らに話しかけてきた。
「おお、君が砦破りのジョシュア君かね!」
「砦破り?」
僕に声をかけてきたのは闇ギルドが情報収集限の一つとして親交のある民間ギルドの長であり、彼らのたっての願いで凱旋パーティを合同で行いたいという申し入れがあって、バーベキューパーティが催されたという事だった。
まるで僕一人の功績のように言う彼らに困っていると、視界に入ったリガーが焼けた肉をくわえたまま僕と目が合い、バツが悪そうにそそくさと逃げた。
「ああ、なるほど」
砦を破壊したのを全部僕の仕業って事にされたらしい。人間からしたらモンスターの拠点を破壊した功労者ってわけだ。モンスターの立場のリガーからすると面倒な立場だから押しつけたくなるのもわかるけど。
困っている僕の背中をグレッグが叩く。
「せっかくだ、英雄扱い楽しんじまえよ」
にししと彼は笑う、人の気も知らないでこのおっさんはと思いながらも、僕は彼らからの好意を素直に受け取ることにした。




