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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
千の夜と一話ずつのお話
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22回目 ストーリージェネレイター

近未来、物語もAIが作るようになった社会。

AIによる各企業の作品乱造により良作が埋もれ、

被害を出さないよう躍起になった関係各社や出版社による情報戦略により、

出版による創作が人間の社会から消失するという事態にまで陥った。


しかし一度失ったとしても、人々は物語を必要とした。

個人用に作られたその持ち主の好みや人生にあわせた物語を書くAI、

ストーリージェネレイターは発売されるやいなや爆発的ヒットを収め、

テレビや冷蔵庫などと同じように、

個人が一つのジェネレイターを持つのは当たり前になっていた。


そして若者の間では自分用の物語を交換して読む事が流行、

互いの物語を気に入った者同士は恋人や親友になる事が多くなった。


少年は家があまり裕福でなかったためまだジェネレイターを持っていなかったが、

先日なくなった祖母のジェネレイターを譲り受ける事が出来る事になり浮かれていた。

祖母との関わりはほとんど無く、会うとしても正月に2~3日程度、

どんな人かも知らない間柄であった。


少年は祖母のジェネレイターから出力される物語が祖母向けの難しい話が多く、

友達との交換も出来ないのが気に入らなかったが、

自分の生活をジェネレイターに日記のように入力する事で、

少しずつ改善していく様子が楽しくなってきていた。


ある日ジェネレイターが妙な物語を吐きだした。

それは祖母の隠した物語だった。

祖母は彼女自身で一つの物語を描いていた、

そして家族がその通りの人生を歩むように働きかけていたのだ。


その事実を知った少年は物語創作に興味を持ち始める。

ジェネレイターを手本としながら、自分でも物語を書き始める。

そして少年は自分の物語に絵をつけたいという友人と出会う。


彼に連れられてきた場所には物語に絵のついた本が沢山売られていた。

AIの方が人間より扱いやすい為出版社などが人間の手による物語を冷遇し始めた事に反抗し、かつて漫画と呼ばれたその技術を持つ人々は表舞台から姿を消し、こうした即売会というイベントでのみ作品を発表するようになったのだという。


少年はあるストーリージェネレイターによって社会のあり方自体も

筋書きを計算して描かれている事を知り、

そのジェネレイターは即売会も法的に禁止しようとしている事を知る。

それに対抗しストーリーテラー達に働きかけ、

少年達は社会のあり方の筋書きに伏線を仕込む事を計画、

AIによるストーリー構成の穴をつき、

ゲリラ的に筋書きに伏線が発生するように事件をしかけ、

最終的に社会を支配するジェネレイターに自己矛盾を生じさせ、

機能を完全に封じる事に成功した。


少年は成長し、少しずつ出版で漫画が発売されるようにもなった。

今では青年になった彼もいつか相棒と一緒に漫画の出版を夢見ながら、

今日も即売会で自分達の作品を発表するのだった。


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