215回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 26:追憶の森(21)
ギルドへの帰り道の途中、僕はどうしても気になってグレッグに尋ねる。
「あれでよかったの?」
「ああ、これが俺たちのやり方だ。それにアイツお前にケガさせただろ、その落とし前はつけねぇとな」
腕を組んでうんうんと自分の言葉に納得している様子のグレッグを見て僕は『思ったよりヤクザな世界かもしれない……ッ!!』と心の中で思った。
ドルフはあのまま砦の跡地に置き去りにしてきた、あの状況ならドルフがなにか咎められることはないだろうとグレッグは言った。自分の事よりいつも他人の事を考えてしまう、そんな人なんだろうと僕はグレッグに対して思う。それはとても生きづらい生き方のはずだ。
「ねぇグレッグ」
「なんだ?」
「グレッグって良い人だから、僕が守るよ」
「なぁに生意気言ってんだよおめえは」
照れくさそうに笑いながらグレッグは僕の頭をガシガシと撫で、その尻尾は勢いよく振られている。助け出せてよかった、そう思いかけた時彼の手が急に止まった。
「どうかした?」
グレッグは指を口の前で立てて僕を静止し、なにかの匂いを嗅ぎ、耳を動かしてあたりの音を聞こうとしていた。
「不味いな、砦の連中に取り囲まれた」
「ぬなっおいらがそんなヘマをするはずが……、あー風上にめっちゃいるにゃー引き返すかにゃ?」
「いや、後ろは風下から追跡されてたみてぇだな。挟み撃ちだ、戦るしかねえ」
「そんな折れかけの消化斧一本でかにゃ!?嫌だにゃー!おいらはまだ死にたくないにゃー!!」
ミギャッ!といってリガーが全身を総毛立ちさせて巨大な毛玉に変わる。周囲から僕にも聞こえる物音をさせて、モンスターの集団が現れた。
「二十人……いやもっといる」
グレッグが僕を庇うように僕の前に丸太のような腕を出した。
「下がってろジョッシュ、お前は怪我人だ。俺がなんとか切り開く、その隙にお前だけでも」
「怪我人はお互い様、それに僕らはみんなで無事に帰らなきゃ。そうでしょグレッグ」
笑って見せる僕に緊張した様子だったグレッグの顔が少し和らぐ。
「意外と肝すわってやがるなテメェも、仕方ねえ、やれるだけやってみるか!」
「お待ちなさい」
突然どこかで聞いた声がした。張り上げるわけでも怒鳴るわけでもないのに、妙にその場に響く支配力を持った声。その場にいた全員がその声の主の方を見る。
「どうしてアイツがこんなところに」
あっけに取られた顔をしているグレッグ、その視線の先にはギルドの支配人ガットの姿があった。




