213回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 24:追憶の森(19)
「ジョッシュ!返事しろ!!」
瓦礫の中をグレッグはリガーと共にジョッシュを捜し歩いていた。
「なぁー早く逃げないと捕まっちまうにゃ、あんちゃんも覚悟のうえでお前さんを先に行かせたんじゃないのかにゃ?」
「うるせえ!俺だけ戻っても意味ねえじゃねえか、アイツが、アイツが無事でいなきゃ俺は!!ジョッシュ!!」
聞く耳持たない彼の様子にやれやれと首を横に振ったリガーが突然顔を上げる。鼻をひくひく、耳をそばだてて、尻尾は膨らみ真上に立っていた。
グレッグが彼の視線の先のものを見ると、そこには一人のローブを身にまとったネズミ獣人の少年の姿があった。
「ネズミだにゃー!!」
そういうとそのぶよぶよに太った体からは想像もつかない速度でリガーが飛び出し、ネズミ少年のいた場所に躍りかかった。しかし突然ネズミ少年は姿を消し、リガーは瓦礫の山に突っ込み下半身だけむき出しという無様をさらしてしまう。
「ねぇ」
自分の真横でしたその声にグレッグは身構える、いつのまに移動したのかネズミ少年はグレッグの隣にいた。彼は不釣り合いなほど大きな杖で方角を指した。
「人を探してるんでしょ?僕あっちの方で声を聞いたんだ、行ってあげるといいんじゃないかな」
グレッグは少年の事は得体がしれないと思いながらも、藁にもすがる思いで示された方角に駆け出す。
「ありがとうな!……あれ」
彼が振り向きながら少年に礼を言うと、そこにはもう誰もいなかった。走り去っていくグレッグの様子を眺め口から煙を吐きだしながら、埃と灰にまみれたリガーは舌を出す。
「猫灰だらけなんて冬でもあるまいし笑えないにゃぁ」
グレッグがネズミ少年に指示された方角に瓦礫を飛び越えかき分けながら進むと、そこには木の根が絡まってできた巨大な球体があった。
「おーい、誰かいないかー」
木の壁に阻まれて小さくしか聞こえなかったが、グレッグにはその声の主がわかった。
「ジョッシュ!待ってろすぐに出してやる!!」
彼は間髪入れず手にした消化斧を木の根の球体に振るい、できた亀裂をこじ開けて中を覗き込んだ。そこにはジョッシュの空元気な笑顔と、ぐったりと壁にもたれかかっているドルフの姿があった。




