210回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 21:追憶の森(16)
「混沌構成物使い……、貴様"契約者"か」
ならばと叫びながらドルフは大剣を引き抜き、木の根を踏み越えながら再び僕にそれを振るう。
「貴様を殺さねばならない理由がもう一つできたということだ」
かろうじてその一撃を交わすが、僕は後ろに下がりながら尻餅をついてしまった。なにかにつまづいたわけじゃない、大剣が起こす風、冷たい剣気、そしてドルフの獣じみた殺意に体が怖じ気づいて、足が震えて踏ん張りがきかなかったのだ。
情けないぞ、立って。戦え。僕は自分にそう言い聞かせると、前を見据えながら立ち上がる。こちらに迫るドルフに向かって妨害のために伸ばした木の根は急いだためか細く弱い、彼は一薙ぎに切り払いこちらに迫ってきていた。
「汚らわしいディオスがグレッグに触れるな」
ドルフの次の一撃が振り下ろされる瞬間、手元にあった壁の破片を彼の目に向かって投げつけ、彼の視界が塞がれている間に僕は地面に転がりその一撃を交わす。敷き詰められたレンガが粉々に砕け、その破片が僕の肌を裂く。
「グレッグの事が好きなら、なぜ彼を一人にした!」
僕は怒りに任せてダガーを突き出し、ダガーから眩い光が迸り、空間が爆ぜた。




