208回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 19:追憶の森(14)
「ジョッシュお前は下がってろ、危ねえぞ」
次から次へと現れる砦のモンスターをなぎ倒し、グレッグは僕を庇いながらそう言った。倒されたモンスター達は起き上がってこられないように叩きのめされてはいたが、みんな命を奪われるところまでは行っていない。ギルド外の勢力に対してグレッグなりに考えてるんだろう。感心すると共に僕を庇いながらじゃ負担が重すぎるとも思った。
「僕だってやれるんだってとこ見せとかないと、グレッグの相棒は務まんないでしょ」
グレッグが僕を守るために伸ばした腕に触れ、僕は意思を示すために強く握った。
「つくづく困った奴だぜお前は」
グレッグは手を下ろし、自由になった腕も使い新たに現れたモンスターの集団をアクロバットのような動きで一周する。
「俺に対してそんな面倒な筋を通そうとする奴なんて初めてだ」
そういった彼の横顔は嬉しそうだった。
「相変わらず人がいいなグレッグ」
通路の奥から聞こえてきたその声の方を見ると、そこには虎の姿をした獣人がいた。
「ドルフ、てめえもこっちの陣営にいやがったか」
「お前は思い違いをしている、そこの人間」
そういってドルフは手にした大剣で僕を指す。
「お前は彼を道具として必要としているだけだろう、認めれば許してやる。無傷で帰してやるぞ」
ドルフはそういうと見透かしたような顔でにやりと笑う。彼の隣に蠢く目玉と歯をむき出しにした口のついた黒い肉塊のようなものが見える。どうもそれはグレッグには見えてないようだった。
「何か答えたらどうだ?それとも図星過ぎて言葉も出ないのか」
「あ、ごめんなさい。見当違いすぎて全然頭に入ってこなかったもんで」
僕はとっさに思った通りの事をそのまま返答してしまう。
「なんだと?」
ドルフの毛が逆立つ。僕は彼に少し腹を立てていた。彼はおそらくグレッグを蔑ろにする存在の一人だと確信したからだ。
「僕が来たのは彼が好きだし、恩があるから一人にしておけないってだけですよ」
それに彼の横の黒い謎の生き物のようなものも気になる、僕は覚悟を決めてグレッグに耳打ちする。
「グレッグ、この人僕がやる。先に行って」




