204回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 15:追憶の森(10)
「グレッグの奴は相手を選ばず困ってる奴は見捨てておけない、誰かが不幸になりそうなら助けずにいられない。そんなお人よしだった」
「ある日アイツはクリーチャーの危機が迫っている人間の街を守った。協力者もなく一人で死にかけながら、街を守り切ったあいつを待っていたのは悪意だった」
「グレッグ自身は良かれと思ってした事だったが、あいつの存在を人間側もモンスター側も逆手にとって、互いに相手を殺しつくす闘争を起こすきっかけとして利用した」
「状況を飲み込めず、なんとか事態を解決しようと奔走するアイツを事もあろうに周囲が責め立て、孤立させた。お前さえいなければ争いは起きなかったってな」
「大抵の連中は理由を欲しがる、それがたとえ嘘だろうが都合がよければ鵜呑みにする。大義名分さえあればなんでも許されると思い込む。そしてそういう不都合の当て馬にされるのは、大抵善人やお人好しだ」
「その結果いつも自分が利用されたり裏切られて、何度でも傷つくはめになっても、あいつは馬鹿だから繰り返しちまう。やめろって口で言っても聞きゃしない、性分なんだろうなあれは」
「グレッグはな他人からひどい目に遭わされることに慣れすぎてるんだ。悪い意味でね。だから自分に対して害意を持っているかもしれないと相手に感じるとその関係を諦める、心に壁を作って相手を遠ざけずにはいられない」
「お前さんはいい線行ってたと思うぜ、側から見ててもグレッグの奴お前さんのこと気に入ってたみたいだしよ。だから責めないでやってくれ、アイツは傷つくことに疲れちまったんだ」
マスターからその話を聞いて僕はますますグレッグの事が好きになった。彼を助けたいと思った。その気持ちを彼も気づいたようで困ったように笑う。そんな僕たちにあるモンスターの噂話が耳に入った。
グレッグが彼に恨みを持つモンスターの一団に捕まえられ、明朝には処刑されるかもしれない。
彼はそういっていた。




