203回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 14:追憶の森(9)
ギルド酒場に入りカウンターに座るとマスターの方から僕に近づいてきた。話を切り出そうとする僕にマスターは唇に指を当ててシーッと言った。
僕の背後からガットが通りかかり、横目に僕を見ると怪訝そうな表情を浮かべた。
「なんとか生きて帰りました」
僕のその言葉に彼はふんとつまらなさそうな顔で鼻をならし、ギルドへと降りていった。
「正直お前が帰ってくるのは予想外だったよ、少なくともグレッグの奴にお前を守り通したって自慢されるくらいは覚悟してたんだが」
表情を曇らせる僕にマスターはジョッキに入ったミルクを出した。
「お前がアイツの事をほったらかしにせずに、俺に相談しに来てくれる奴でよかった」
そういってウインクをしてみせた。
「あの森から帰ってきたって事はカオスオブジェクトは回収したのか?」
「たぶん、聞いてた話と違うんですけど、これがそうなんでしょうか」
そう言って僕が琥珀のダガーをカウンターに置くと、彼は一瞬目を見開き、ハンカチをそれにかけると僕に押し返した。
「ギルドにはこれを渡すんですよね」
「いや、これはひとまずお前が持っておくと良い。むしろ誰にも見せるな」
「え。わかりました、でもなんで?」
マスターはじっと僕の目を見た、それより聞きたいことがあるんじゃないのか、そんな意図を感じる視線に僕ははっと我に返る。
「グレッグがどこに行ったか心当たりないですか?彼について知ってることなんでもいいんです、僕に教えてください」
マスターは拭いていたグラスを置くと、お前に話したって事は秘密だぞ。そういってグレッグについて話し始めた。




