196回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 8:追憶の森(3)
僕らはひとまず二手に分かれて周辺の調査と、食料の調達を行うことにした。
グレッグと僕、向こうの二人組で二班。慎重な様子だったグレッグがその提案をしたのは意外だったが、少なからずギルドに登録があるモンスターであることと、グレッグの鼻が彼らの匂いを覚えた事で追跡や発見がたやすい事が担保になっていると彼から道中説明があった。
「長期戦になると手持ちの食料だけじゃ心もとないしな、探索しながら物資調達は基本だぜ」
「でもこの森って動物の気配もないし、キノコや果物も成ってる様子がないけれど、食料はどうやって確保するの?」
「あーそれ、やっぱり気になるよな」
そういうとグレッグは苦笑いして頭をかき、周辺の匂いを確認して歩を進めた。その先には木に取り込まれたグズグズに溶けた死体と、その荷物があった。
「もしかして……」
青ざめる僕を尻目にグレッグは食人樹木との距離を慎重に詰めて、バックパックをひったくるように掴むとこちらに戻ってきた。
「ほい、この通り!」
彼は腐肉となにかの汁がたっぷり付着したバックパックを掲げてドヤ顔を浮かべている。まるでフリスビーを取って戻り、褒めてもらうのを恍惚としながら待つわんこのように。。
「やっぱりかー」
それを食べるのは少し抵抗があるという感想は伏したまま、グレッグは頭を撫でられるのと賛辞、どっちが嬉しいだろうと少し逡巡して。勉強になります。と言葉にした。グレッグは両手を腰に当てて胸を張り鼻息荒く、俺にかかればこんなもんよー!と言った。嬉しそうにする彼を見ると、なんだか僕も楽しい気持ちになるのが不思議だ。




