195回目 異世界勇者の解呪魔法(ディスペルマジック) 7:追憶の森(2)
「そんで、なんで化け物殺しを請け負った俺達がこんな連中捕まえてるんだっけ」
僕とグレッグの食料を狙って襲ってきた二人組を返り討ちにして捕まえ、僕らは縛り上げたリザードマンと、太っちょの猫獣人を見下ろしていた。
「死ぬ前にその人間の悲鳴を聞きたかったナァ」
リザードマンは舌なめずりをして僕を見た、その目は常軌を逸しているように見えた。彼の仲間であるはずの猫獣人はふわぁとあくびをして眠そうにうとうとしている。
「殺しが趣味か、ならわざわざここでやらんでも街中でも街道でもいいだろうに」
グレッグが呆れながらそういうと、リザードマンはケタケタと笑った。
「命捨ててる奴殺しても楽しくないだろ、楽しくないよなぁ?こういう場所でまさか自分が死ぬとは思ってない奴を切り刻んで、限界まで追い詰めてさぁ、命を惜しんでよぉ、殺さないでって嘆願する顔を眺めながらぶっ殺すのが最高に気持ちいいんだ」
「悪趣味だねぇ、まぁ気持ちはわからなくもねぇが相手が悪かったな、相応の報いは受けてもらうぜ」
と言いながらグレッグはリザードマンの首元に鉈を押し付け、僕に耳打ちする。
「なんて言ってはみたがどうする?このままほっとけば勝手にくたばるとは思うが」
「出来れば人死にはない方が」
僕のその言葉にグレッグは予想していた通りの返答だとばかりに小さくため息をつく。
「やっぱり甘ったるい考えだなお前」
価値観の違い、グレッグは僕のそれを確かめようとしたのだ。なんとなく察してはいたけれど、恐らく僕が現代の日本で生きてきた常識はこの世界では足かせになる。彼はそういいたいのだろう。
「それでも、お前がそうしたいって言うなら」
グレッグは僕に笑って見せ、鉈でリザードマンの服の胸元を割いて、鉈の先でギルドプレートを引きずり出すと、リザードマンは青ざめた顔をした。
「おやおや、どうにも都合が悪いことを見つけちまったみたいだな。ギルド所属者が人間を命令外で襲うのはご法度だ、このことをガットの野郎が知ったら、てめえの体の皮から鱗、骨に至るまでバラバラにはぎ取って装備品として売りに出しちまうかもな」
「あんまり相棒をいじめないでやってくれにゃ」
猫獣人は相変わらず眠そうな顔をしながらもグレッグを見上げてそういった。その様子からグレッグはリザードマンと猫獣人がなぜ二人で行動しているか、その理由を察したようだった。人格的に信用が置けないリザードマンではあるが、猫獣人が監視することで条件の履行は可能だという事を、猫獣人はそれとなくグレッグに伝えたのだ。
「それならお前ら二人今から俺たちのクエストに付き合え、命がけでな」
こんなとこでどうだ?と得意げな顔をするグレッグに僕は苦笑いをしながら頷いて見せた。




