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168回目 空の騎士 7:翼ある純潔

 朝焼けが白く窓から差し込み薄暗い部屋の中を照らしていく。

 ほこりが光を反射しながらゆらりとゆれる雑用部屋の片隅で、騎士は大量の木くずの散らばった樫のテーブルの上に乗っかりナイフで木を削り何かを作っていた。


 日の光に気づくと騎士は肩をコキコキとならしながら腕を回す。

 彼はその手の中の筒状の物に息を吹きかけ木くずを飛ばすと日の光にかざして出来を確認し、よしっとナイフを机の上に放り投げる。

 そして傍らにあった真鍮のボルトに松ヤニに彼特製の秘密の粉を混ぜた物を塗りつけ、それを木の筒にはめ込むと子供っぽい顔でにっと笑った。


 日が昇りきり少女が起きてくると、二人は食堂で朝食をとる。

 眠そうな顔の騎士を見た少女は南国豆の煮汁を彼に差し出し、気付けにいいと飲ませると、あまりの苦さに驚く彼の反応に背中を向けてくすくす笑う。

 騎士はそんな彼女にやれやれとため息をつくと、子供っぽいいたずらにふと懐かしい安らぎを感じていた。


 彼女が籠を片手に中庭にでて、植物達への水やりと実った野菜や果物の収穫をしている隣で手伝いを終えた騎士が彼女が作業に夢中になってるのを確認し、朝方完成したあの木の筒と真鍮のボルトを取り出し空を見上げた。


 チュチュル、ピピピピと鳥の鳴き声が響き渡る。

 ハンカチで汗を拭っていた少女はその鳴き声を聞いてふと手をとめ顔を上げた。

 小鳥の声にしては妙に大きいことに不思議がりながら、鳴き声のする方を向いてみるとそこには飛んでくる小鳥達を肩に乗せながら木の筒と真鍮のボルトのバードコールという小鳥を呼び寄せる道具をならしている騎士の姿があった。


 彼は少女ににっと笑ってみせると、彼女に近づきバードコールを差し出す。

 上目使いに騎士を見上げる少女に、彼は小さく縦に首を振る。

 少女は頬を赤らめながら目を輝かせてバードコールを受け取ると、なんどか失敗しながらも小鳥を呼び寄せ、次々に近くにやってくる小鳥に驚きの声をあげ、小さな声をあげて楽しそうに笑った。


 少女は騎士の膝の上にちょこんと座りながら、小鳥に果物をあげていた。

 座り込んで楽しそうな彼女を見つめていた騎士に、彼女が近づくと突然彼の膝の上に座り込んでそれっきりずっとその状態のままになってしまった。


 騎士はどうゆう顔をしたらいい物やら困りながらバードコールを鳴らし飛んできた小鳥を指に止め、

少女の手のひらの上に乗せたり、動けない彼を狙った意地悪なカラスの糞をもろにくらったりしていた。


 そんな彼に少女が魔物退治が仕事の騎士がなぜこんな物の作り方を知っているの?と訪ねると、彼は冗談めかして小鳥を捕まえて食べるためさと答えた。


 そんな和やかな一時の中、騎士は何かに気づき突然目の色を変えた。

 小鳥たちが一斉に飛び去り少女も様子の変化に気づくと、騎士の顔を見て凍りつく。殺気にみちた騎士の表情は、彼女の知る彼とは全く違う別人のようだった。


 騎士は少女の肩に手を置き自分の上から降りさせると、ゆらりと立ち上がりその飢えた獣のような目で辺りを見回す。


 その時二人の間にはどこからか聞こえる金属が板に擦れる音がけたたましく鳴り響いていた。


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