143回目 ブルームーン
空に蒼月と呼ばれる青い月が浮かんでいる
月の影響なのか地上に生きる人間が一切死ぬことがなくなった世界
かつては罪人を裁くための処刑方が一般人の生からの解放のために使われるようになり
逆に罪人は鉄格子の牢屋に入れられ、食事も与えられず死ぬことも許されず、永遠に生き続ける
そんな牢獄の中に黒豹獣人「リスト」はいた
リストは妹が自分との約束を守り生きているかを確認するためだけに脱走を試みる
仲間と脱走に成功したリストだったが、分散して逃げ傷つき倒れてしまう。そんな彼を親切な夫妻が匿う
夫妻は敬虔なカトリックの信者で、その時代ほとんど禁忌とされたある行為をしていた
子を作り育てること、夫妻の子アリッサ(五才)とリストは交流を通して仲良くなっていく
人々の救済を目的とした無差別殺戮集団や、
地方地方に配置された政府の粛正兵団の手をかいくぐりながら、
ひたすら一方向に向かって歩いていく
アリッサはある日ふと気づいて彼に妹がどこにいるのか聞いてみる
リストはある方向を指を指し、アリッサはなるほどと手を叩く
二人はあの昼も夜も場所の変わらない青い月を目指して旅をしていたのだ
旅路の果て、うち捨てられた宇宙ステーションのロケットに乗って月に向かって飛んでいく二人
宇宙空間の孤独の中、二人は永遠の命がなぜ与えられたのかその答えを見いだす
「永遠なんて、きっとそんなに長くない」
人は昨日と明日の間の今を繰り返し生きているだけだから
愛し合うことさえできれば、人は永遠を素晴らしい奇跡にできる
宇宙の幾億千の光に包まれながら、二人は肩を並べ抱きしめあう
妹は実はリストの妄想で、そうでもしないと彼は生きていられなかった
月にたどり着き現実に直面した彼に危機が訪れる
しかし隣にいるアリッサが彼にとっての本当の大切な人となった今
彼にかりそめの支えなどすでに必要はなかった




