140回目 ボンドトゥペット
「120円になりまぁす」
コンビニ店員がそういうと客は胸に抱いていた猫をおもむろに抱え直し
その肉球をスキャナーに押し当てた
『ティロリロリン♪』
小気味の良い音をあげて代金を支払った客は悠然と店を出て行く
あたりを見回すと道行く全ての人がなにかしらのペットを連れていた
いわゆる流行の『お財布ペット』という奴である
店員Aは子供の頃から動物が大好きであった
彼女がコンビニのバイトを選んだのも、
いろんな人のペットを見る事が出来るからという主要因によるものだ
「あのー」
窓の外を見ていた店員Aに次の客が声をかけた
「あっすみません」
店員Aは次の客のペットがどんな動物か楽しみにその人影に顔を上げた
「えっ!?」
店員の目の前にいたのは身長2mはあろうかという
巨大な犬の姿の人間(?)であった
「くーださーいなっ♪」
声の主は彼(?)の肩にしがみついた5さいくらいの女の子だった
唖然とした顔の店員を後に肩に女の子を乗せたままコンビニを出て駅向かって歩き始める犬獣人。
「ほら、だから変装しなきゃ店員がビビるっていったじゃないかぁ」
「ビビってないッスよ、ありゃ感激してたんすよーぼくにはわかるもんね」
犬獣人リナルは不満そうに鼻を鳴らしヴォフッと鳴くと、
着ていたマントのフードを目深にかぶってふてくされた
「よしよし、ごめんっすよ。でもおかげでアイスも買えたしぃ」
戦利品のアイスクリームを見て少女エレットはにんまぁと笑う
「くふふのふぅ~♪リナルさんの分もちゃんとあるよー」
ほれほれと彼の大好物のチョコミントアイスを振るエレット
それを見て思わずリナルは生唾を飲む
「まぁ・・・気晴らしにはなった。ということにしてやる」
「やさし~い」
「おいっちょっやめろ!」
リナルのふかふかもふもふの首毛にエレットが顔をつっこむ
「ったくもう~こいつは」
ぶつくさ言いながらリナルは手慣れた手つきで切符発券機を操作し
スキャナーに肉球をぺたりとつけた
切符発券機から子供用の切符が一枚出てくる
「ほらよ」
「一枚?」
「なんだよ」
「リナルさんの分は?」
「俺はペットだっつってんだろ、おたんこエレット!」
「あははーそうでしたぁ」
舌をだして頭をこつんと叩きながら、
エレットは切符を受け取る
その駅の改札は駅員に切符を渡してスタンプを押してもらう形式であったため
リナルはまたビックリされるんだろうなぁとトボトボと改札に向かう
「おじさんおーねがい♪」
というエレットの声と共に駅員の驚きの声が響く
なんだかんだとお騒がせしながら
二人の日常は続いていくのだった




